Happy New Year 2019

明けましておめでとうございます。
冒頭の写真は昨年8月にTall Ships Stavangerの後にノルウェーの友人家族と訪れたLofthusから飛ばしたドローンからHardangerfjordを撮影したものです。
昨年は久しぶりに帆船紀行を楽しんだのですが、帆船模型の方は開店休業状態です。

フィヨルド巡りの後に辿り着いたベルゲンではFjords Steamというイベントが開かれていて、正に蒸気時代全盛期の船、車がベルゲンの美しい街に集結していました。上の写真はイベントの様子を撮影し白黒で処理してみました。往年の蒸気時代の雰囲気が伝わるのではないでしょうか。
スタヴァンゲルの帆船イベントの記事に続き、このイベントについても書いていきたいと思います。
今年も宜しくお願い致します。
STV SEDOV 1921 (バーク型帆走練習船セドフ) その1

STV Sedovは、4本マストの現役帆船の中で世界一の大きさを誇っています。2000年に5本マストのフルリグド・シップ型クルーズ帆船のRoyal Clipperが建造されるまでは、約80年間に亘りセドフは世界最大の現役の帆船でした。
ところで世界第2位の4本マストの帆船はKruzenshternですが、セドフのサイズは全長385.6ft(117.5m)、船幅48.1ft(14.7m)、総排水量6,148トンと、クルゼンシュテルン(全長376ft、船幅46ft)より僅かに上回っています。

この帆船はドイツのブレーメンを本拠とするF.A.Vinnen & CoがキールのFriedrich Krupp Germaniawerft造船所に発注し1921年に竣工しました。当時の船名はMagdalene Vinnen IIでした。当時は内燃機関を持たない純粋な帆船が多い中で、この帆船は建造時からスクリューが装着されていたのが特徴だそうです。
冒頭の写真を拡大すると、従来のムルマンスクの紋章が組み込まれたフィギュアヘッドが取り外されているのが判ります。SEDOVは、2017年5月にムルマンスク国立工科大学(Murmansk State Technical University)からカリーニングラード国立工科大学(Kaliningrad State Technical University)に所属が変更になっていることが理由と思われます。船尾を見るとしっかりロシア語でКалининград(Kaliningrad)と母港が表記されていました。

僕のSEDOVのイメージは白い船体で、同じくカリーニングラードを拠点とする砲門が描かれた黒色の船体のクルゼンシュテルンと好対照のイメージでしたが、2005年にドイツ映画 "Der Untergang der Pamir"("Lost of Pamir")に出演した際にFlying P-Linersの伝統に従いブラックの船体に塗り替えられたそうです。マストも鮮やかな橙色に塗られています。

さて次は船上に上がります。
LOA 1922 (バーケンティン型帆船 LOA)

LOAはデンマークのAalborgを母港にするバーケンティン型(Barquentine)帆船です。元々はスクーナー型の艤装で同じデンマークのSvendborgで1922年に建造されました。建造時の船名はアフロディア(Aphrodite)で美しい名前の木造船でした。船体はオーク材で造られていたそうです。1952年にLOAと改名され1972 年までは輸送帆船として長い期間活躍、その後個人オーナーを経て、2003年にTall Ship Aalborg Foundationに寄付されました。

この帆船のホームページは、一部を除きデンマーク語ですし限られた情報しかありませんが、2004年〜2009年に大掛かりな改修が行われ、艤装もバーケンティンとなったそうです。
クラスAの木造バーケンティン型帆船で興味があったのですが、この帆船もタイミングが合わず見学が出来ませんでした。全長131ft(40m)、船体長100ft(30.5m)、船幅20.7ft(6.3m)、95Gross Tonと、長いバウスプリットを持ったスマートなクリッパー型の帆船です。ドルフィン・ストライカーはネプチューンの銛のデザインです。建造時のアフロディアの名前の方がしっくりきます。

鋼鉄船からの改造ではなく、元々3本マストの帆船として建造されていますので、本当にバランスが良く美しい船です。下の写真を拡大するとシュラウド(Shrouds)を固定する長いチェーンプレート(Chainplates)の形状が良く解ります。

ブルーに塗装された船体、木製のマスト、ヤード、ブームとクラシカルな姿ですね。今回Tall Ships Stavanger 2018に参加していたAクラスの木製の帆船は17世紀のフリゲート艦のレプリカShtandartとこのLOAの2隻だけでした。Shtandartの奥に停泊していたので、スタヴァンゲルの港でLOAはあまり目立っていませんでしたが。

展帆せずともとても美しい姿です。写真を拡大すると、キャットヘッドのデザインがデンマークの国旗をモチーフにしていたりと粋な感じです。
Bark Europa 1911 (バーク型帆船 エウロペ) その2

Europaをこの角度で撮影すると寸詰まりの帆船のイメージですが、スタンスルを張った姿は見事です。
スタンスル・ブーム(Studding Sail Boom)の先端をズームアップしてみると、アウター・ブーム・アイロン(Outer Boom Iron)の形状がよく解りました。帆船模型が常に脳裏にありますが、いつかスタンスルを張るようなクリッパー型帆船作製に行き着くことが出来るのでしょうか。

と、気になって手元にあるUSS Constitutionの帆船模型キットと図面集をみたら、しっかりスタンスルの図解がありました。帆船模型作製は長く休止していますが、そろそろ再開したいと思います。

スタヴァンゲルでも殆どの大型帆船がセイルを揚げないでパレードをしている中でEuropaはしっかり展帆していました。この帆船が建造されたのは1911年ですので、2017年夏にニューヨークからハンブルグに里帰りしたPekingと同じ歳ですね。既に船歴100年ですが、これからも益々活躍しそうです。

現在の位置をみると南米ウルグアイの首都Montevideo付近です。安全な航海をお祈りします。
Bark Europa 1911 (バーク型帆船 エウロペ) その1

この帆船に出会ったのは2009年のハリファックス以来です。冒頭の写真は2018年7月26日にStavangerの港に接岸、というかFryderyk Chopinに横付けする場面です。

ハリファックスに続き今回も公開時間が予定に合わず、この帆船の船上を見学することが出来ませんでした。上の写真のようにフレデリック・ショパンとKapitan Borchardtの2艘のポーランド船に挟まれておりじっくりと見学することが叶わずに残念でした。

停泊する帆船の合間からフィギュアヘッドを撮影してみましたが何か違和感を感じます。後で2009年に撮影した下の写真を確認したところ船首部分に装飾はありません。公式WEBの説明では以前のフィギュアヘッドを南極海を航海中に破損してしまったので、2010年3月に新しい船首像を取り付けたそうです。
このフィギュアヘッドは船名の由来であるギリシャ神話をモチーフにしており、フェニキアの王女エウロペが牡牛の姿に化けた全能の神ゼウスに誘拐されるシーンだと思われますが、牡牛像はともかく、絶世の美女であったエウロペの姿が現代的というかアニメ的であり、あまり詩的な感じではありません。ギリシャ神話と言えば、Star of Indiaの端正なエウテルペの船首像を思い起こしますが、エウロペの彫像とはまるで雰囲気が違います。

さて、この船は元来エルベ川の灯船として建造されており、バーク型帆船に改造され就役したのが1995年ですが、ヤードは木製ですし、スタンスル・ヤードも装着されており正統的な帆船らしい艤装です。下の写真はフォアマストの部分ですが往年の快速帆船を彷彿させます。

エウロペは全長が僅か183.7ft(56m)の小型帆船ですがとても活動的です。今年11月から来年2月に掛けて南極への航海を3回予定しているそうです。