HMSサプライズ(HMS Surprise,ex-HMS Rose) 1970 その6

HMS Surprise Qter to port view

艦尾から艦舷に掛けての構図は特に好きなのですが、ポート(左舷)側のガンポートが全て開いていないので、すこし冗長な感じの写真になってしまいました。写真をクリックして拡大すると、木造フリゲート艦の外板張りの雰囲気が伝わると思います。

このHMSサプライズの復元船が建造されたのは1970年ですので、既に船歴43年の老朽船です。同じ造船所で1963年に建造されたブルーノーズⅡは、2010年から2012年に掛けて全ての外板を張り替える 大掛かりな補修をしていますが、HMSサプライズはどうなのでしょうか。木造帆船を維持・管理するのは大変ですね。

HMS SUrprise Qtr Deck

艦上を見ると、クオーターデッキに鎮座している筈の32ポンドのカロネード砲も取り外してありますし、ラット(舵輪)にはラットロープも巻かれていません。セイルは取り付けられていますが、出航できる状態ではありませんね。帆船に出会った時の感激が少し落ち着くと細部が気になりだしてしまうのですが、それでもこのHMSサプライズは見所が沢山あります。

HMS Surprise Gun Port

上の写真は艦尾に尤も近い13番目のガンポートです。ガンポート・リッドをよく見ると、船体の形状に合わせてリッドの厚みが均一でないことに気が付きます。

HMS Surprise Port to Qtr

左舷に設けられた艦上に上がる階段からチャンネルを斜め上から見たのは上の写真です。チャンネル・サポートの位置がよく判ります。ついでに、チャンネルの細部の写真も貼付けてみます。

HMS Surprise Channel Details

帆船模型を作る前から、実船を細かく観察をすると、中々模型作製の手が動かせなくなります。下の写真は長く作製が止まっているフランスの34門フリゲート艦La Gloireの模型ですが、実は次のステップはチャンネルの取り付けと艦上構造物の製作なのです。

La Gloire Sep 2013

次は漸くHMSサプライズの艦上に上がります。

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HMSサプライズ(HMS Surprise,ex-HMS Rose) 1970 その5

Stern View (2)

HMSサプライズのスターンです。僕が知りうる現存する帆船の中で一番美しい船尾です。
下の写真はクォーター・ギャラリーですが、こちらも均整の取れた見事な造形です。

HMS Surprise Stern Qtr(1)

帆船模型のキットでは、スターンとスターン・クォ—ターは金属の整形部品で再現されることが多いと思いますが、ここはスクラッチで作製したいところです。2011年1月から作製が止まっている1778 年に建造されたフランスの34門艦フリゲートLa Gloireの船尾は略同じ時代のフランス艦であることからも、HMSサプライズとスターンのデザインが極似しています。1/90の模型で、このスターンをスクラッチで再現できるか試してみたいと思いますが、窓枠の格子の造作を考ええただけでクラクラしてきます。下の写真はLa Gloireのキットの金属部品ですが、12mm x 5mmの窓枠に、4本の格子を入れ、窓を9分割にする作業は多分、、、出来ません。

La Gloireキット金属製スターン

さて気を取り直して、もっと詳しくスターンを見ていきます。次の写真は、スターンの彫刻です。モチーフになっているのは、トライデント(三又の銛)を持った海の神ネプチューンと、怪物になる前には美少女だったと伝えられるメデューサかもしれません。

HMS Surprise Stern Caving

下の写真は、ラダー(舵)の取り付け部の拡大写真です。ラダー・チェーンの取り回しが模型作りの参考になります。

HMS Surprise Rudder

次の記事では、艦舷を見学しつつ乗艦します。

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HMSサプライズ(HMS Surprise,ex-HMS Rose) 1970 その4

HMS Surprise Figurehead

次はHMSサプライズの船首構造を見ていきます。
フィギュアヘッドは、剣と盾を持った女性像です。ローマの戦士のような姿です。

ところで、ジャック・オーブリー・シリーズのHMS SURPRISEの表紙を見ると、ジェフ・ハントが描いたHMSサプライズの船首像が少し不自然です。本の表紙絵をよく見ると剣を左手に持っています。題材の検証をしっかり行うジェフ・ハントらしくないな、と思いましたが
The Frigate Surprise: The Complete Story of the Ship Made Famous in the Novels of Patrick O'brianの中で、ジェフ・ハントが自らこの理由を説明していました。本の表紙に使用するために本来の絵を反転したそうです。ところで、表紙絵の船首像は彩色されていますが、個人的な好みでは、フィギュアヘッドは単色(白とか金とか)が好きです。彩色された船首像は、コミカルな感じがします。

HMS Surprise Book Cover

マスター・アンド・コマンダーの映画の中では、砲撃を受けて痛々しい姿になった船首像を修復する場面がありますが、木彫りのフィギュアヘッドを作製するのも、修復するのも芸術家の仕事ですね。帆船模型でこの船首像を再現するのは至難の業だと思います。

HMS Surprise 船首像(2)

さて、次は美しい弧を描くヘッドレールを見ていきます。19世紀に入ると船首構造が単純化されていきますが、1794年に建造された元フランス艦には、見事な造形のヘッドレールが取り付けられており、HMSサプライズの復元船でも良く再現されています。

HMS Surprise Head Rail (1)

フォアキャッスルの先端から見下ろしたのが下の写真ですが、上から見るとヘッドレールは真っ直ぐであり、キャッドヘッド・サポーターに接続される、ロワー・レール以外は、3次元の曲面ではないことが良く判ります。この写真からヘッド・ティンバー(Head Timber)の取り付け位置も明確だと思います。

HMS Surprise Head Rail(3)

下の写真は略正面から船首を撮影した写真です。ヘッドレール、トレイルボード、チーク(Cheek)の位置関係が判ります。

HMS Surprise艦首前方

それでは次は艦尾を見ていきます。

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HMSサプライズ(HMS Surprise,ex-HMS Rose) 1970 その3

HMS Surprise Full VIew

HMSサプライズの全景です。超広角レンズ(16mm)だと長いジブブームを含めて画面に入りますが、美しいフリゲート艦の端正な姿が完全にデフォルメされてしまいます。

この帆船は元フランス艦であったことからも、船体は見事なタンブルフォーム(Tumblehome)です、と言いたいのですが、元英国艦のHMS ROSEの復元船を改造しているので、実際にはフランス艦はこれ以上にチューリップ型の船体だったのかもしれません。

HMS Surprise Tumblehome

次は船体を細かく見ていきます。
先ずは模型作りの時に細部が気になるアンカー・ライニング(Anchor Lining)です。通常模型の図面は、下の写真のように側面図ですので、実際にどのくらい船体から浮いているのか、板厚はどのくらいなのかと気になっていました。

HMS Surprise Anchor Lining(2)

フォア・チャンネルに括り付けられているスペアヤードが邪魔していますが、この写真を見ると、船体への取り付け方が判ると思います。しかし、重い錨のガードにしては思ったより板材の厚みがないですね。

HMS Surprise Anchor Lining(1)

さらに別の角度からの写真を貼付けてみます。しかし、復元船とはいえ、これだけ細かく見ても不自然なところがなく、本当によく再現されていると感心します。チャンネル・リンク(Channel Link)、アイボルト(Eyebolt)の取り付け方とか砲門の構造とか、長く見ていても全く飽きません。

HMS Surprise Anchor Lining(3)

記事を書いていて、久しぶりに帆船模型製作の意欲が湧いてきそうです。

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HMSサプライズ(HMS Surprise,ex-HMS Rose) 1970 その2

Surprise Bow (1)

HMSサプライズの艦首部分です。これは復元帆船ですが、マスター・アンド・コマンダーの映画のため可能な限り忠実に作製(改造)されたものと思います。

史実に基づくと、オリジナルのHMSサプライズは、フランスのコルベット艦Unitéとして、Pierre-Alexandre Forfaitの設計により、1794年にLe Havreで建造されました。そして、1796年に英国海軍の36門フリゲート艦HMS Inconstantにアルジェリア沖で拿捕されてしまいます。この場面は、ジェフ・ハントが描いており、僕も2008年7月にMYSTIC SEAPORTを訪れた時に、複製画を買って、長らく休業中の帆船模型工房(?)に飾ってあります。

HMS Surprise Captured French Ship

ユニテ(Unité)の建造当時のスペックは、デッキ長が129ft(約39m)、全幅が31.8ft(約9.7m)、重量が578トンのコルベット艦でした。因みに、ユニテとしての武装は、8ポンド砲 x 24門、4ポンド砲 x 8門の合計32門を搭載していました。その後、英国海軍に編入され、HMS Surpriseとして1798年に再艤装された際は、(英国海軍の基準に従い)9ポンド砲 x 24門、後部甲板に12ポンド・カロネード砲 x 4門、4ポンド砲 x 8門、そして前部甲板に12ポンド・カロネード砲 x 2門、4ポンド砲 x 2門の合計40門を搭載し、5等級の34門フリゲート艦として登録されております。その後、史実では、ガンデッキの9ポンド長砲を全て、32ポンドのカロネード砲に置き換え、同じく、上部甲板の16門も全て18ポンド・カロネード砲に変更されています。

因みに、オーブリー・シリーズのフィクションでは(映画でも)、HMSサプライズは、下の復元船の写真の通り、9ポンド長砲の武装のままです。

HMS Surprise Gun Deck

小説の中で、HMSサプライズは、高いメインマストが特徴として描かれておりますが、これも史実とは違うフィクションです。パトリック・オブリアンは、(フィクション上)28門搭載の6等級のフリゲート艦であるHMSサプライズに、36門フリゲート艦のメインマストを装着させて、この帆船の特徴としています。前の記事の通り、復元帆船でも一際高いメインマストが見事に再現されています。


The Frigate Surprise: The Complete Story of the Ship Made Famous in the Novels of Patrick O'brianThe Frigate Surprise: The Complete Story of the Ship Made Famous in the Novels of Patrick O'brian
(2009/05/18)
Brian Lavery、Geoff Hunt 他

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このあたりの話は、上に紹介するBrian LaveryとGeoff Huntの好著で詳しく説明されています。実はこの本も、2009年夏にMYSTIC SEAPORTを再訪した時に博物館のショップで買いました。最近アマゾンで本を買うことが多いのですが、やはり手に取って買った本は思い入れが違います。

史実としてのHMSサブライス、フィクションのHMSサブライズ、そして復元帆船としてのHMSサブライズが混在して、少し判りづらいのですが、昨年夏に数多く撮影した写真を何度かに分けて紹介していきたいと思います。

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