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プライド・オブ・ボルティモアⅡ(Pride of Baltimore II 1988、その1)

Pride of Baltimore 1

信じられないほど後ろに傾斜したマストです。ボルティモア・クリッパーを描いた絵画を見る度に、「マストの傾斜角度があまりに不自然だな」と思っていたのですが、本当にここまで傾斜しているとは想像出来ませんでした。

今回ハリファックスで出会った帆船の中で、僕が一番気に入ったのがこの船です。とても美しい姿のトップスル・スクーナーです。因みに、このブログのプロフィール写真も、プライド・オブ・ボルティモアがハリファックスの帆船パレードで礼砲を撃っている姿にしました。

プライド・オブ・ボルティモアⅡはメリーランド州とボルティモア市の旗艦(Flagship)、それに親善帆船(Goodwill Ambassador)として、1988年4月30日に進水、就役したのは1988年10月23日です。長いジブブームを含め全長は157ft(47.85m)ですが、船体は96.6ftと30m以下、船幅は、26ft(7.93m)。マストの高さはなんと107ft(33m)もあり、非常にスマートな船体です。重量は185.5トンですので、今回ハリファックスに集まった帆船の中で小型な方ですが、19世紀と同じ工法で建造されており、外板(Hull Planking)はメリーランド州産のホワイト・オークが使われ、マストは西海岸産の米松(Douglas Fir)、要所にカリブ産のマホガニーも使用された素晴らしい木造帆船です。日本にも世界周航の途上、1998年7月に立ち寄ったそうです。

Pride of Baltimore 3 Bow

公式WEBに詳しく経歴が掲載されておりますが(http://www.pride2.org/index.php)、プライド・オブ・ボルティモアはⅡは、18世紀の終わりから、第2次英米戦争に掛けて活躍したボルティモア・クリッパー(Baltimore Clipper)の忠実な復元船です。

復元にあたりモデルとされた船は、1812年にボルティモアで建造された私掠船Chasseurで、記録によると296トンでプライド・オブ・ボルティモアより大型です。また、Chasseurは1815年のHMS St Laurenceとの遭遇戦当時、102名が乗り組み、大砲14門(12ポンドカロネード砲10門、キャノン砲4門)を搭載していたとの記録があり、プライド・オブ・ボルティモアはこのChasseurのレプリカ船ではありません。また、Chasseurは建造当時はトップスル・スクーナーでしたが、1815年にはブリッグ型に改造されたとの記録もあります。話しが更に脱線しますが、HMS St.Laurenceは、元々メリーランド州のTalbotで1808年に建設されたボルティモア・クリッパーであり、Atlasという名前のアメリカの私掠船でしたが、英国海軍が1813年に拿捕し、英国海軍に組み入れられた経歴を持ちます。つまりハバナ沖の1815年2月26日の戦闘は、アメリカの私掠船Chasseurと元アメリカの私掠船であるHMS Laurence、ボルティモア・クリッパー同士が戦ったものです。これも、余談ですが、HMS St.Laurenceは、Chasseurとの遭遇戦の当時、12ポンドのカロネード砲12門、9ポンドの長砲2門の合計14門を搭載していたそうです。因みにプライド・オブ・ボルティモアに搭載されている綺麗なカラベル張りのボートにChasseurの名前が付けられています。

Pride of Baltimore 2 Stern

1977年に建造され、1986年に喪失したプライド・オブ・ボルティモア(オリジナル)については、別の記事『その2』で触れみたいと思います。

テーマ : 帆船紀行 - ジャンル : 旅行

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