USS Constitution 1797(その1、建造時の状況について)

上の写真は2008年夏にボストンを訪れたときのコンスティテューション号(USS Constitution)の姿です。帆走も出来る状態で文字通り現役艦として保存されていますが、1797年10月21日の進水からちょうど210年目にあたる2007年10月より約3年間の修復工事に入っていました。
長いこと漠然とコンスティテューションを訪れたいと思っていましたので、対面したとき20年ほど前にポーツマスでヴィクトリー号(HMS Victory)を見上げた時と同じような感激を味わいました。ただし、ポーツマスではヴィクトリー号のボリューム(大きさというか存在感)に圧倒されたのに対して、コンスティテューション号を見たときの最初の印象は、何度も重ね塗ったと思われる黒光りする艦舷(外板)からか、あるいはトップマストを外した修復中の姿からか、「よく210年もの長い時間を凌いできたな」というものでした。
余りに多く語られている船なので、今更とは思いますが、建造の経緯についておさらいして置きます。
(1)1794年のNaval Act(海軍条例)で建造が承認された6隻のフリゲート艦の内の1隻。フリゲート艦の建造目的は(特に当時、地中海でバーバリー海賊に苦しめられていた)米国の通商を保護すること。1794年11月1日に建造が開始され1797年10月21日に進水。実は当時のジョン・アダムズ大統領臨席の下で9月20日に進水式が行なわれたのですが、船台から8m動いただけで止まってしまうというアクシデントを起こしています。大変な難産だったようです。
(2)建造したのはマサチューセッツ州ボストンのEdmund Harttの所有する造船所でした。独立戦争時の1775年に設立されたContinental Navy(大陸海軍)は、1785年に解散していますのでConstitution建造当時は正規の米国海軍工廠は存在せず民間の造船所に委託され、Samuel Nicholson艦長の監督下で建造されたと記録されております。
余談ですが、Nicholson艦長は、大陸海軍の旗艦であったBonhomme RichardのJohn Paul Jones艦長の下で海尉(Lieutenant)だった経歴の持ち主です。筋金入りの軍艦乗りですね。
(3)大陸海軍創設当時は、英国海軍に全く歯が立たず散々な目にあったそうですが、それを意識したのか1794年のNaval Actでは6隻の内、4隻は当時の平均的なフリゲートより大型の44門艦と指定してありました。ところが1796年にアメリカとアルジェが休戦した影響もあり、結局建造されたのは44門艦が3隻(Constitution, President及びUnited States)、それに38門艦が3隻(Congress, Constellation及びChesapeake)でした。
(4)コンスティテューションの寸法は、全長204ft(62 m)、ガン・デッキ長174ft(53m)、全幅43.6ft(13.26 m)、重量2,200トン(1533BMトン)となっています。多少古い設計ですが、ほぼ同じ時代に活躍した英国海軍の74門艦(HMS Vanguard、HMS Elephant等のネルソンの乗艦が多いArrogant class、合計で12隻建造)は、標準ガン・デッキ長168 ft (51 m)、全幅46.9ft (14.25 m)、重量1600~1645BMトンですので、コンスティテューションはフリゲート艦として桁外れに大きいことが良く判ります。
因みにArrogant Classの74門艦の内4隻 HMS Excellent(1787)、HMS Elephant(1786)、HMS Saturn(1786)及びHMS Goliath(1781)は、1813~20年に掛けて、58門搭載のフリゲート艦に改装(Razeed)されています。オーブリー・シリーズの中で、USS Constitutionを視認したHMS JAVAの水兵が「ポルトガルのレイジーだ」と声を上げる場面がありましたね。
(5)建造に使用された木材は、ライブ・オーク(ジョージア州産のSouthern Live Oak)、ホワイト・オーク(White Oak)、ホワイト・パイン(White Pine)が中心です。Mystic Seaportで補修工事中のCharles W.Morganに使われている木材と全く同じ種類ですね。
(6)武装について、コンスティテューションは44門艦とされておりますが、1812年の第2次英米戦争当時は、24ポンド砲 x 30門、32ポンド・カロネード砲 x 22門、24ポンド長砲(バウ・チェーサー)x 2門、24ポンド長砲(スターン・チェーサー)2門の合計56門を搭載していたとの記録がありますので、平均的な英国海軍のフリゲート艦には余りにも強力な敵であったと思います。
コンスティテューションは、ボストンの海軍工廠の敷地内に現役保存されておりますので、先ずは荷物チェックを受けて、グループに分かれ現役の水兵の案内を受けることなります。これは英国ボーツマス港の旗艦ヴィクトリー号と同じですね(20数年前と見学手順から変っていなければですが)。

コンスティテューションについては、何回かに分けて記事を書こうと思います。写真の通り、補修中であり「聳え立つマスト、天を貫くジブ・ブーム」の印象からはかけ離れた姿ですが、長い船体、大きく開いた砲門、24ポンド砲と、とても迫力がある姿でした。
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