Explore Ocean(Newport Beachの海洋博物館)その3      USSエセックス 1799(後編)

USS ESSEX 6

USSエセックスは32門搭載のフリゲート艦で、デッキ長が140ft(約42.7m)ですので、44門艦のスーパー・フリゲート艦USS CONSTITUTIONのデッキ長174ft(約53m)に比較すると小振りですが、とてもスマートな船体です。実際にUSS ESSEXは当時大変な快速艦でした。この模型を製作したのは、Mr.Robert J. Dowst(1924-1989)で、搭載砲と艤装を少し詳しく見ると建造当時の姿を再現したことが判ります。

American Light and Medium Frigates 1794-1836 (New Vanguard)の中で図解されているUSS ESSEXの姿は、12ポンド砲x28門、32ポンド・カロネード砲x18門の合計46門を搭載しており、1809年の改修後の姿だそうです。この改修の際に模型のような優雅なフォアキャッスルのレールはブルワーク(bulwarks)に取って代わっており、まるでUSS Constitutionを小型にしたような姿になりました。因みに、1812年にDavid Porter艦長が受け継いだ時には、32ポンド・カロネード砲x40門、12ポンド長砲x6門を搭載していたそうです。

USS ESSEX 3

上の写真は艦首部分ですが、縮尺通りのビレイピン、忠実に再現した縦木のグレーティング、キャットヘッドに組み込まれた米粒ほどの滑車等々、ため息が出るほど見事に作り込まれた模型です。クオーターデッキも不格好なカロネード砲がなく優雅な姿です。

USS ESSEX 5

海洋小説のファンであれば、USS ESSEXの名前から、
The Far Side of the World、翻訳版の邦題は
南太平洋、波瀾の追撃戦〈上〉―英国海軍の雄ジャック・オーブリー (ハヤカワ文庫NV)の物語の中で英国の捕鯨船を拿捕しまくるアメリカ海軍のフリゲート艦USS Norfolkを思い起こすかもしれません。無論、USS Norfolkも、マスター・アンド・コマンダーの映画の中でフランスの私掠船として描かれているAcheronも実在した帆船ではありません。史実として英米戦争(1812-1815年)中に、USSエセックスは英国の通商を破壊する為に「Far side of the world」に至る巡航を行い、1813年3月に英国の捕鯨船Elizabethと Nereydaを捕獲してチリのバルパライソに寄港した後の9ヶ月間でなんと13隻の英国の捕鯨船を捕獲しています。その内、捕鯨船アトランティック(Atlantic)を再艤装し、元々捕鯨船が搭載していた18ポンドカロネード砲x10門に加え、6ポンド砲を更に10門搭載し、USS Essex Juniorと命名(とても安易な名前ですが)等級外の20門搭載スループ艦として僚艦にしています。

さて、このUSSエセックスに対して、英国海軍のJames Hillyar艦長が指揮する36門搭載フリゲート艦HMSフィービー(HMS Phoebe)と20門搭載スループ艦HMSチェラブ(HMS Cherub)が南大西洋に派遣されました。ヒリヤー艦長への命令書には「如何なる犠牲を払っても(at any cost)USSエセックスを破壊せよ」と記載されていたそうです。

battle-of-valparaiso.png

1814年前半、USSエセックスとUSSエセックス・ジュニアは、6週間もの間HMSフィービーとHMSチュブラによりバルパライソ港に封じ込まれていました。運命の日は、1814年3月28日に訪れます。USSエセックスは、俊足を生かし海上封鎖を破る賭けにでました。ところが、帆を張り増したUSSエセックスを突風が襲い、なんとトップ・マストが吹き飛ばされてしまいました。HMSフィービーは18ポンド長砲の長い射程で、USSエセックスを狙い撃ちします。片や、USSエセックスの32ポンドのカロネード砲は射程が短くHMSフィービーに損害を与えることが出来ません。

USS ESSEX (Joseph Howard)

2時間を超える撃ち合いの後、USSエセックスは、戦死58名、負傷45名、行方不明31名の大損害を被り、星条旗を降ろしました。HMSフィービーとHMSチュブラの損害は、合計で戦死5名、負傷10名でした。USSエセックスのポーター艦長は、32ポンドのカロネード砲を18ポンドと12ポンドの長砲に換えてほしいとの陳情を何度も海軍長官(United States Secretary of the Navy)におこなっていた記録が残っていますので、この海戦の結果を多いに悔やんだことでしょう。

因みにHMSフィービー(Phoebe)は、1795年に建造されていますが、色々な場面に登場します。ジャック・オーブリー・シリーズの中で描かれている、モーリシャスのグランド・ポートの戦いでフランス海軍に降伏したクロンフォート卿(この人も架空の人物ですが)の乗艦HMS Néréide(ニアリード、32門フリゲート艦)も、1797年にHMSフィービーが拿捕した元フランス艦です。HMSフィービーについても、いつか記事にしたいと思います。

博物館に展示されている帆船模型からどんどん話しが膨らんでしまいました。それでは、次の模型に移ります。

テーマ : 帆船紀行 - ジャンル : 旅行

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