Flying Fish 1857 (その7、船歴の検証)

手元にあるコーレル(Corel)のフライング・フィッシュの模型の解説書というか製作の手引を読んでいて、Howard I Chapelle著The American Fishing Schooners: 1825-1935の94~97頁の記載文との齟齬がとても気になります。
フライング・フィッシュについてコーレル社のキットの紹介文は次の通りです。
The FLYING FISH was designed by Jeremiah Burnham, the famous shipbuilder, and was launched at Essex, massachusetts, in 1860. For more than 20 years the FLYING FISH was the most representative ship of the MARKET SCHOONER class and was taken as a model by shipbuiders of the time.
【フライング・フィッシュは、有名な造船家であるジュレミア・バーナムにより設計され、マサチューセッツ州のエセックスで1860年に進水した。フライング・フィッシュは20年以上に亘り、マーケット・スクーナー・クラスの代表的な帆船であり、当時の造船界の模範であった】
Chapelleの著書では、フライング・フィッシュは1857年に建造されたことになっています。
以前の記事でも、コーレルの説明文に疑いの目を向けましたが、建造年は気になります。フライング・フィッシュに関する記録についてWEB上で探してみましたがなかなか見当たりません。
ところが最近、Mystic SeaportのWEBを見ていて、Reserch the Collectionsという項目があり、1857年から1900年迄のShip Register(船舶登録)が検索できることを発見しました。
早速、Flying Fish, Schoonerと入力すると、同じ名前のスクーナーが何隻が検索されます。1858年のNew York Marine Registerには、フライング・フィッシュの名前のスクーナーが5隻掲載されています。リストを見ていくと、1857年にEssexのA.Burnhamが建造したFlying Fishが見つかりました。登録港はGloucester、オーナーは、B.Lowe、船長はLoweとされています。因みに、調査日は1857年10月ですので、Flying Fishが建造されたのは、1857年の10月以前ということですね。船材はO(OAK-オーク)と登録されています。
Mystic Seaportはさすがですね。これでモヤモヤした気分が晴れました。コーレルのキットの説明はいい加減ですね。さて、Chapelleの著書の中では、フライング・フィッシュは、建造後Gloucesterを拠点にMackerel Fisherman(サバ漁)を数年間行った後、New London(コネチカット州、ニュー・ロンドン)に売られ、今度はアザラシ(Seal)とゾウアザラシ(Sea Elephant)漁(!)に従事したと記載されています。たしかに1876年の船舶登録データを見ると、この年から母港がNew Londonと記載されています。
アザラシ漁といえば、新艦長、孤高の海路 (海の覇者トマス・キッド〈7〉) (ハヤカワ文庫 NV ス 16-7)の中で触れられている箇所があったと思いますが、現在の過激な環境団体の活動を鑑みるとなんとも複雑な気持ちになります。
ところで、冒頭の写真は、マサチューセッツ州EssexのStory家の造船所があったところです。以前の記事で紹介したEssex Shipbuilding Museumの敷地で行われていた手作りカヌー教室(日本的な言い方?)です。こちらはとても牧歌的な風景でした。
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