モーリシャス(Mauritius その3、帆船模型工房)

モーリシャスHistoric Marine (1)

モーリシャスで一番有名なのは、スティーブン・マチュリンがThe Mauritius Command (Aubrey Maturin Series) で語っているとおり、1680年頃に絶滅してしまった飛べない鳥ドードー(Dodo)でしょう。

ところで、あまり知られていないと思いますが、帆船模型も現在のモーリシャスの特産品の一つなのです。モーリシャス滞在中に、いくつかの帆船模型工房を訪れてみました。

訪れた中で、歴史があり一番立派な工房が、モーリシャス島の北部のGoodlandsにある、Historic Marineでした。

大きなショールームがあり、帆船模型でお馴染みのモデルが展示されています。ソレイユ・ロイヤル、ソブリン・オブ・ザ・シーズ、サン・フェリーペ、ロイヤル・キャロライン、ヴァーサ等々と帆船模型展示会のようです。

担当者が、当時のオリジナル図面通り忠実に製作していること、大変な繊細な作業であること、製作に数百時間を有すること、等々を詳しく説明をしてくれます。

展示品を良く見ると、オリジナルの図面といっても、全て帆船模型のキットが販売されているモデルなので、「オリジナル図面はどこから手に入れるのか」とちょっと意地悪な質問をしてみました。「フランスの帆船は、パリの海洋博物館から、英国の帆船はロンドンの海洋博物館から取り寄せている」と涼しい顔で説明されましたが、実際に工房を見せて貰ったところ、壁にボロボロになったCOREL社とかSERGAL社の図面が張ってあり納得しました。

帆船模型(完成品)の価格は良心的です。2003年当時でキット価格の3~4倍ほどの価格設定でした。キットをベースにした作品とは云え、幾らかのデフォルメ、省略はありますが、通信販売等で目にする東南アジア産とかの「おぞましいレベルの手作り帆船模型」と比較すると、ちゃんとした帆船模型ですし、「モーリシャスの帆船模型は(価格競争力も含め)世界的に有名。ちなみに英国のパブに飾ってある帆船模型の大部分はモーリシャス産である」、とのユーモアを交えた説明には素直に頷いてしまいました。

Mauritius Model Ship Shop

実際に帆船模型を製作している視点から見ると、ピカピカに光っているニス塗りの船体、厚ぼったい布のセイル(なぜか、殆どの模型にセイルが付けている)と、なんとも言えませんが、Historic Marineの名誉の為に付け加えると、表題のサン・フェリーペの写真のように、ちゃんとキットの図面をベースに正確に製作されている模型であることは確かです。上の模型は別の工房のショールームです。Le Saint Geran(ル・サン・ジェラン)の模型は、粗造りながら素材を生かした模型で、スケールモデルとは対極にありますが、これはこれで雰囲気がありました。帆船模型工房により、全く違う作風なのは面白いです。

モーリシャスHistoric Marine (3)

自分も趣味で帆船模型を製作していることと説明したところ、「標準品の帆船模型の販売だけではなく、注文作製にも応じる」とのことでした。製作途中の特別注文品の例として見せてくれたのが上の写真です。綺麗にラッカーが塗られた作風は僕の好みではありませんが、丁寧で細かい造作は、「標準品」と比較にならないレベルでした。

勿論これは趣味でもボランティアでもありません。立派な産業です。

モーリシャスHistoric Marine (2)

帆船模型 ⇒ 手作業による細かい造作 ⇒ (手先が器用で安価な)モーリシャスのインド系住民の労働力の活用 ⇒ 労働集約型ビジネス、との発想は確かに判りやすく、帆船模型を切り口にした地場産業の育成、雇用の促進の考えは崇高で素晴らしいと思いますが、完全に分業体制になっている工房で、船体を作る人、船体に塗装をする人、船上構造物を作る人、艤装を行う人、帆装を取り付ける人(もっと云えば、ひたすらシュラウドを張っている人、ひたすらヤードを作っている人もいる)を見ていると、とても不思議な気がしました。

モーリシャスHistoric Marine (4) La Gloire

ここで作られる帆船模型は、当然、ちゃんとコスト計算がされた上で作製され販売される商品であり、趣味の帆船模型とは当然違った物ですが、今、僕が製作しているLa Gloireの綺麗な完成品もガラスケースに飾ってあり、ちょっと複雑な感慨に浸りました。

これでモーリシャスに関する備忘録は終わりにして、2009年夏のノバスコシア旅行の話題に戻ることにします。

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