Explore Ocean(Newport Beachの海洋博物館)その5      HMSブリタニア(Britannia) 1682

HMS Britannia 1

1682年にチャッタム王立海軍工廠で建造されたHMSブリタニア(Britannia)の1/48の縮尺の構造模型(ストラクチャード・モデル)です。

17世紀の帆走軍艦は余り知識がないので、この巨大な3層艦の戦歴については割愛します。Chatham Historical Dockyardは、残念乍ら訪れたことがありませんが、いつかゆっくり時間を掛けて訪れたいと思います。しかし、ウェブサイトのドメイン名を、the dockyardとしていることに唸ってしまいます。まあ、HMSヴィクトリーも1765年にこの造船所で進水していますので当然かもしれませんが。

HMS Britannia 4

この大きな模型からは美しさは伝わってきません。グロテスクな印象を与えるフィギュア・ヘッドです。クオーター・ギャラリーは3層艦らしく立派ですね。同時期のフランスの優雅な戦列艦とは異なる雰囲気ですが。

HMS Britannia 2

HMSブリタニアの名前を冠した、艦船は数多くあります。William Carnegie提督のトラファルガー海戦の乗艦HMSブリタニアは1762年に同じくチャッタムで進水した100門艦です。この船もHMSヴィクトリーと同様、トラファルガー開戦時は船歴40年以上の老朽艦でした。HMSブリタニアの名前の帆走軍艦は、1820年に建造された120門艦があります。1860年に建造されたスクリューを備えた121門搭載の3層艦HMS Prince of Walesは、1869年にHMS Britanniaに改名され1916年まで存在しました。

HMS Britannia 3

HMS Britannia 5

さて、1682年のHMSブリタニアの模型に戻ります。上の写真は、フォアキャッスル付近とスターボード側から見た艦側です。見事に作り込まれた大作ですね。

次は、鈍重にさえ見えるHMSブリタニアと対極にあるクリッパー帆船の模型を紹介します。

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帆船関係の書籍(Howard I Chapelle編)

Howard I Chapelle著書

記事の更新がまたもや著しく停滞してしまいました。

ますます仕事が忙しくなり帆船模型と向かい合う時間も殆どありませんが、ささやかな楽しみは、就寝前の短い時間に少しづつ読み進めるHoward I Chapelleの名著の数々です。

以前の記事で紹介した、The American Fishing Schooners: 1825-1935を皮切りに、新品で手に入るHoward I Chapelleの著書を7冊揃えてみました。The History of the American Sailing NavyThe History of Americal Sailing Shipsの2冊は専門店からの取り寄せで新品とはいえ、再版されたのが1980年代なので幾分黄ばんでいましたが、まずまずの程度の本を手に入れることが出来ました。

The History of American Sailing Shipの初版は1935年でアメリカ独立前の18世紀から20世紀初頭の木造スクーナーに至るまで、豊富な図面とともに米国での帆船の発展が丁寧に解説されており、本文は350頁程の分量です。

The Americal Sailing Navyの初版は1949年で、更にアメリカ海軍の艦船に絞った力作で補記(Appendix)を加えると550頁に及ぶ大作です。図面も豊富で頁を捲っているだけでも幸せな気分になれます。

Howard Irving Chapelle(1901-1975)は、造船技師としてのキャリアを積み、1930年代には自らの造船所をメリーランド州のChambridgeの近くに持っていたそうです。そして第二次世界大戦中は、米国海軍の造船技師として活躍、大戦後は、英国、トルコでの研究も行い、1957年から国立アメリカ歴史博物館(The National Museum of American History)の学芸員(curator)となり1971年に引退するまで、米国の帆船の造船技術と歴史を中心とした研究を続けられました。Howard I Chapelleの著書は、アメリカの帆船の歴史を研究する上での古典ですね。

それでは、Howard I Chapelle以後のアメリカの帆船の研究はどうなっているのでしょうか。

アメリカの帆走海軍(Sailing Navy)を主題とした次の新刊(2001年出版、なんと21世紀の著書!)もお勧めです。

Sailing Warships of the US NavySailing Warships of the US Navy
(2003/07/01)
Donald L. Canney

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アメリカの帆走軍艦というと、どうしてもUSSコンスティテューション(USS Constitutionに代表される重量級フリゲート艦を想像しますが、この本には米国海軍の戦列艦も詳しく解説されており、1820年に進水したUSS Ohio(74門艦、なんと就役は1838年だそうですが)、1814年に進水して1815年に就役したUSS Independence(74門艦)とかはなんと晩年の写真も掲載されています。これ以外にも、今まで見たこともないような貴重な写真が幾つか添えられているのが特徴です。

帆船の本は、出版される数も限られているので、なにか面白そうな本を見つける度に買ってしまうので、どんどん増えていきます。しかし、帆船模型の作製はなかなか進みません。

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最近購入した帆船関連の書籍(木造スクーナー編、その1)

Lettie G Howard 船首 (2)

帆船模型作りは、半年以上殆ど進捗がありませんが、最近購入した書籍を何冊か紹介します。先の記事でBORDERS閉店について触れましたが、帆船に関する本はBORDERSには殆どありません。結局アマゾン頼りになってしまいます。

この記事では、1857年にマサチューセッツ州Essexで建造されたフライング・フィッシュ(Flying Fish)の製作の参考になりそうな本を幾つか挙げてみます。尚、リンク先はAmazon.co.jpですが、僕はAmazon.comから直接購入しています。

因みに冒頭の写真は、1893年にEssexで建造された Lettie G. Howardの船首部分です。ウインドラス(揚錨機)とバウスプリットの位置関係が判ります。右下に見える箱は、アンカー・チェーンの格納箱と思われます。コーレルのフライング・フィッシュのキットの図面では、アンカー・チェーンが中部甲板迄まで延びて、甲板下に格納されるような構造になっていますが、これは素人目に見てもありえない構造です(そもそも、鉄製のチェーンが木製の甲板を削りながら格納されることが不自然)。実際のEssexの帆走漁船は、ポート側(左舷)のアンカーは鉄製のチェーンで巻き取った後は格納箱に収納され、スターボート側(右舷)のアンカーは、アンカー・ロープが装着されているのが一般的で、漁場で錨を下ろす際は、ロープが使われていたそうです。

The American Fishing Schooners: 1825-1935については以前の記事で触れましたが、19世紀中頃のEssex産のスクーナーに関して最近次の本を購入しました。

Gloucester on the Wind: America's Greatest Fishing Port in the Days of Sail (Images of America)Gloucester on the Wind: America's Greatest Fishing Port in the Days of Sail (Images of America)
(1995/04/01)
Joseph E. Garland

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Down to the Sea: The Fishing Schooners of GloucesterDown to the Sea: The Fishing Schooners of Gloucester
(2003/07/01)
Joseph Garland

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購入してから、上の2冊の本の内容が似ているなと思ったのですが、それもその筈で両方とも同じ作者Joseph E.Garlandが書いた本でした。Image of Americaは貴重な写真が殆どですので、読み易い(というか見易い)しイメージが沸きます。最高なのは25頁に挿入されているSteering Gear(操舵装置)の広告です。模型としても人気のあるブルーノーズ(Bluenose)のSteering Gearは舵輪軸が中心ではなく、右よりにオフセットされる構造ですが、グロスターを拠点とするスクーナーで舵輪軸がギア・ケースの中央にあっても間違っていないということが判りました。

更にエセックス産の正統なるスクーナーに関する本でお勧めなのは次の本です。建造中のスクーナーの姿とか大変に貴重な写真が多く挿入されています。
Essex Shipbuilding (Images of America)Essex Shipbuilding (Images of America)
(2002/10)
Courtney Ellis Peckham

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帆船模型を造る際に、甲板の繋ぎ目をどうするか気になりますが、この写真を見ていると、現場合わせで甲板材を張っている様子で、左右同じ長さの木材を互い違いに張るなんてことは有り得ないのではと感じました。3バット・シフトとか、4バット・シフトとか、実用船である帆走漁船(フィッシング・スクーナー)には当てはまらない方式かもしれません。

さて、スクーナー全般として、次の本も買いました。スクーナー発達の歴史としては面白い本ですが、なんといっても、1845年迄のスクーナー船しか扱っていないので、エセックス産のフィッシング・スクーナーの焦点からは少しずれています。図面も多く挿入されており名著だと思いますが。

The Global Schooner: Origins, Development, Design and Construction, 1695-1845The Global Schooner: Origins, Development, Design and Construction, 1695-1845
(2003/04/30)
Karl Heinz Marquardt

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帆船に関する図書は、和書は殆ど無く、洋書(英語)でも発行されている本が限られているので、絶版になる前に購入を急いでいます。帆船に関する本のコレクションはどんどん増えていきますが、帆船模型の製作は遅々として進みません。参考図書を読めば読むほど、キットの図面に疑いの目を向け作製の手が止まってしまいます。まあ、僕の趣味は模型を作るのが目的ではなく、帆船と海洋史の研究(?)だからと自分で勝手に納得していますが。

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New Year's Resolutions(新年の誓い、2011年1月1日)

2011.1.1 modelships

大袈裟な題名ですが、帆船模型についての今年の抱負は、1778年に建造されたフランスの34門フリゲート艦La Gloireについてリギングを除き艤装を完成させること、そして昨年作り始めた1857年にEssexで建造された2本マストのスクーナーFlying Fishを完成させること(!)です。

La Gloireは、2002年8月から造っては壊して造るを繰り返している習作ですが、当面の目標は艦上の艤装を完成させること。冒頭の写真のように、ヘッドレールと船尾の造作が手付かずの状態です。キットに入っている金属部品を取り付ければ直ぐに完成しそうですが、どうしようか迷っています。ヘッドレールとかの製作用の木材として、ドイツ産のペアーウッド(梨の木)、南米産のカステロ(柘植の代用材)、タイ産のシャムツゲ(これも柘植の代用材、アカネ科の樹木)そして御蔵島産の(本物の)柘植を手元に買い揃えましたので、これも試行錯誤しつつ製作しようと思っています。

先ずはリギングが容易だと思われる2本マストのスクーナーFlying Fish作成して、その後にLa Gloireに戻るか、あるいはLa Gloireはリギングを省略して完成とするか考えたいと思います。Flying Fishも以前の記事の通りキットからかなりの改造が必要です。

La Gloire ビレイピンの製作(1)

昨日は大晦日でしたが、久しぶりの休日でしたので、La Gloireのビレイピンを整形するとてつもなく地味な作業をしていました。キットに入っているビレイピンは、当然のことながらとてもデフォルメされており(総じて太すぎる)、ホワイトメタル製を着色した製品の為に整形、塗装が大変です。ビレイピンの現物にある程度忠実なのは、モデフシップウェイ社製の真鍮製のビレイピンなのですが、黒染め液で黒色に着色したところ、色がどうも模型にマッチしません。やはり当時のビレイピンは木製ということで、Amati社の柘植製の8mmのピレイピンを購入して、これを整形することにしました。上の写真の左下がAmatiの製品、右下が半分整形したところ、上が整形済みのビレイピンで、左が完成品です。これでもまだデフォルメされていますが、キットの付属品に比較するとかなり良くなっています。

どうしても帆船模型を見るときにビレイピンの形状が気になります。海外の博物館のスケールモデルは、良く見るとビレイピンまで縮尺に忠実です。下のようなプロクソンのルーターと精密ヤスリがあれば難しい作業ではありませんが、150個程度作成するには根気が必要です。「こんなことに貴重な時間を費やすのか」、と思うのはサラリーマン根性なのでしょう。趣味には締切り日はありませんし、(家族に顰蹙を買わない程度に)好きなだけ時間を使うことができます。仕事に忙殺されてきた毎日を思い起こすとなんて贅沢な時間なのでしょう。指先に集中して小さなビレイピンを削っていると、すこしづつ心が平穏になっていく気がします。

La Gloire ビレイピンの製作(2)

今年の夏は帆船紀行の旅の予定がないので、備忘録と帆船模型、それに日々の雑感(車関係とか)が中心となると思いますが、今年も宜しくお願いいたします。

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モーリシャス(Mauritius その3、帆船模型工房)

モーリシャスHistoric Marine (1)

モーリシャスで一番有名なのは、スティーブン・マチュリンがThe Mauritius Command (Aubrey Maturin Series) で語っているとおり、1680年頃に絶滅してしまった飛べない鳥ドードー(Dodo)でしょう。

ところで、あまり知られていないと思いますが、帆船模型も現在のモーリシャスの特産品の一つなのです。モーリシャス滞在中に、いくつかの帆船模型工房を訪れてみました。

訪れた中で、歴史があり一番立派な工房が、モーリシャス島の北部のGoodlandsにある、Historic Marineでした。

大きなショールームがあり、帆船模型でお馴染みのモデルが展示されています。ソレイユ・ロイヤル、ソブリン・オブ・ザ・シーズ、サン・フェリーペ、ロイヤル・キャロライン、ヴァーサ等々と帆船模型展示会のようです。

担当者が、当時のオリジナル図面通り忠実に製作していること、大変な繊細な作業であること、製作に数百時間を有すること、等々を詳しく説明をしてくれます。

展示品を良く見ると、オリジナルの図面といっても、全て帆船模型のキットが販売されているモデルなので、「オリジナル図面はどこから手に入れるのか」とちょっと意地悪な質問をしてみました。「フランスの帆船は、パリの海洋博物館から、英国の帆船はロンドンの海洋博物館から取り寄せている」と涼しい顔で説明されましたが、実際に工房を見せて貰ったところ、壁にボロボロになったCOREL社とかSERGAL社の図面が張ってあり納得しました。

帆船模型(完成品)の価格は良心的です。2003年当時でキット価格の3~4倍ほどの価格設定でした。キットをベースにした作品とは云え、幾らかのデフォルメ、省略はありますが、通信販売等で目にする東南アジア産とかの「おぞましいレベルの手作り帆船模型」と比較すると、ちゃんとした帆船模型ですし、「モーリシャスの帆船模型は(価格競争力も含め)世界的に有名。ちなみに英国のパブに飾ってある帆船模型の大部分はモーリシャス産である」、とのユーモアを交えた説明には素直に頷いてしまいました。

Mauritius Model Ship Shop

実際に帆船模型を製作している視点から見ると、ピカピカに光っているニス塗りの船体、厚ぼったい布のセイル(なぜか、殆どの模型にセイルが付けている)と、なんとも言えませんが、Historic Marineの名誉の為に付け加えると、表題のサン・フェリーペの写真のように、ちゃんとキットの図面をベースに正確に製作されている模型であることは確かです。上の模型は別の工房のショールームです。Le Saint Geran(ル・サン・ジェラン)の模型は、粗造りながら素材を生かした模型で、スケールモデルとは対極にありますが、これはこれで雰囲気がありました。帆船模型工房により、全く違う作風なのは面白いです。

モーリシャスHistoric Marine (3)

自分も趣味で帆船模型を製作していることと説明したところ、「標準品の帆船模型の販売だけではなく、注文作製にも応じる」とのことでした。製作途中の特別注文品の例として見せてくれたのが上の写真です。綺麗にラッカーが塗られた作風は僕の好みではありませんが、丁寧で細かい造作は、「標準品」と比較にならないレベルでした。

勿論これは趣味でもボランティアでもありません。立派な産業です。

モーリシャスHistoric Marine (2)

帆船模型 ⇒ 手作業による細かい造作 ⇒ (手先が器用で安価な)モーリシャスのインド系住民の労働力の活用 ⇒ 労働集約型ビジネス、との発想は確かに判りやすく、帆船模型を切り口にした地場産業の育成、雇用の促進の考えは崇高で素晴らしいと思いますが、完全に分業体制になっている工房で、船体を作る人、船体に塗装をする人、船上構造物を作る人、艤装を行う人、帆装を取り付ける人(もっと云えば、ひたすらシュラウドを張っている人、ひたすらヤードを作っている人もいる)を見ていると、とても不思議な気がしました。

モーリシャスHistoric Marine (4) La Gloire

ここで作られる帆船模型は、当然、ちゃんとコスト計算がされた上で作製され販売される商品であり、趣味の帆船模型とは当然違った物ですが、今、僕が製作しているLa Gloireの綺麗な完成品もガラスケースに飾ってあり、ちょっと複雑な感慨に浸りました。

これでモーリシャスに関する備忘録は終わりにして、2009年夏のノバスコシア旅行の話題に戻ることにします。

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