ハリファックス帆船パレード後記(2009年7月20日)

Parade of Sail (4)

それは夢のような光景でした。

2009年7月20日、ちょうど1年前の遥かノバスコシア、ハリファックスでの印象は、今も鮮やかに脳裏に残っています。

Parade of Sail 7.20.2009

2009年7月20日、10:30頃から順次埠頭を離れた帆船達は、ジョージ島とハリファックス港(Pier 21あたり)の間の水路を通り一旦、ハリファックスに沖合いに集結して、それから船列を作り、ハリファックス湾を大きく一周しました。ハリファックス湾の奥で帆船達は展帆し、まさに目の前に順々に美しい姿を現しました。最後にクルゼンシュテェルンが沖合いに向かって消えた15:00頃までの約4時間半、至福の言葉に相応しい時間でした。

Parade of Sail 7.20.2009 (2)

前日の7月19日の午後から、気温は低いながら強い日差しになり、7月20日のパレード当日も天候に恵まれました。不思議なことに帆船たちが桟橋から消えた翌日、7月21日からノバスコシアはまた霧と小雨の日々に戻ってしまいました。

H.M.S Bounty and DHF

ハリファックスの帆船パレードに参加したのは帆船は合計で39隻ですので、これまで21隻分の記事を書いてきましたが、これでも全体の半数をちょっと超えたほどです。特に最新の艤装を持つヨットは殆ど割愛しています。上の写真は、ニュージーランドで2002年に建造されたスーパー・ヨットDestination Fox Harb'rが、H,M.S Bountyを抜き去る場面です。Destination Fox Harb'rは、全長134.5ft(41m)、全幅28.6ft(8.7m)、205トンの大きさで、マストはH.M.S Bountyのメインマストより高いほどです。新旧の船体が並ぶのも面白い光景でした。

Parade of Sail (3)

このような帆船が一堂に会する場面を見られる機会は次いつ訪れるのでしょうか。

前回の大阪の帆船パレードからハリファックスの今回のパレードを見るまで26年も掛かりましたが、案外早い時期に今回出会った帆船たちと再会できるかもしれません。

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ブルーノーズⅡ(Bluenose Ⅱ 1963)

Bluenose 1

云わずと知れたカナダを代表する帆船です。
ブルーノーズの姿は、カナダの10セント硬貨の裏面にも誇らしく彫られています。

Canada_2005_FDC_10Cents.jpg

ブルーノーズⅡは、1946年にカリブ海のハイチ沖で沈没したブルーノーズ(1921年建造)のレプリカ船です。ブルーノーズⅡはオリジナル船と同じノバスコシアのルーネンバーク(Lunenburg)のまったく同じ造船所であるSmith and Rhuland Shipyardで建造されていますので、通常の復元船ではなく正当なReproductionです。

オリジナルのブルーノーズは1921年に建造されました。全長161ft(約49m)、全幅27ft(約8m)、重量258トンと大型の2本マスト・スクーナーです。グランドバンク(Grand Bank)を漁場とする帆走漁船であると共に、1920年から始まったInternational Fishermen's Trophyでの勝利も目的に建造されました。International Fishermen's Trophyと名前が付けられていますが、実質、カナダのノバスコシアを拠点とする帆走漁船とアメリカのグロスター(フライング・フィッシュについて(その4、Gloucester)を拠点とする帆走漁船の一騎打ちのレースでした。

Bluenose 4

ブルーノーズは1921年のシーズンから参戦し、アメリカのElsie(この船もModel Shipways社よりキットが発売されています)に2-0で勝利しています。1922年には同じくアメリカの挑戦艇Henry Fordに2-1を打ち破っています。1923年のレースは、アメリカの挑戦艇Columbiaとの一騎打ちとなりましたが、1レースをブルーノーズが勝利したあと、2レース目でブルーノーズが失格となりました。1-1となったところで、ブルーノーズ側が失格についてクレーム、再レースをColumbiaに申し入れたところ、Columbia側がこれを拒否した為に、このシーズンは決着がつかず、1930年までレースが中断されました。

1931年に再開されたレースでブルーノーズはアメリカの挑戦艇Gertrude L. Thebaudに2-0でまたもや勝利。最後に開催された1938年のレースでもブルーノーズは、Gertrude L. Thebaudを3-2で下し、不敗神話を確立しました。

ブルーノーズは帆走漁船が時代遅れとなった1942年にカリブ海の輸送船として売却され、1946年1月29日にハイチ沖のサンゴ礁で座礁・沈没してしまいました。

Bluenose 2

さて、ブルーノーズⅡは、上記した通りの造船所で1963年7月24日に進水し、オリジナル船の船長であったCaptain Angus J. Waltersが処女航海を執り行いました。オリジナル船に敬意を表して、ブルーノーズⅡは一切の帆船レースには参加しないらしいのですが、帆船パレードを先導し、目の前を通り過ぎた姿はまさに快速艇そのもののでした。

ブルーノーズⅡについても幾種類かの帆船模型のキットが発売されています。Model Shipwaysのキット(http://www.modelexpo-online.com/product.asp?ITEMNO=MS2130)が縮尺にも忠実だと思います。喫水線以下が当時の快速スクーナーの典型的な船形であり、模型の姿は保守的(?)な僕の好みには合いませんが、この船は海に浮いているとバランスが取れたとても綺麗な姿です。長い船体、一際高いメインマスト、ヤードもキャビンも厳選された素材で綺麗です。美しい木造帆船のお手本のような船でした。

Bluenose 5

これで、2009年7月20日のハリファックスの帆船パレードに参加した個別の帆船に関する記事はおしまいにします。

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ローズウェイとヴァージニア(Roseway 1925 & Virginia 2005)

Roseway 1

ローズウェイは1925年11月24日にマサチューセッツ州エセックスのJohn F. James & Son造船所で進水した正統なるニューイングランドの木造2本マスト・スク-ナーです。全長137ft(41.8m)、全幅25ft(7.6m)、250トンとスクーナーとしては大きめのサイズだと思います。名前の通り、特徴のあるローズ色のセイルです。

Roseway 2

ローズウェイは、1920年代にカナダのノバスコシアとニューイングランド間で活発に行われていた帆走漁船レースに参戦することも目的に建設されました。別の記事で紹介する予定ですが、1921年に建造され連戦連勝を続けていたノバスコシアのブルーノーズを打ち破ることがローズウェイに与えられた使命でした。残念ながらInternational Fisherman's Trophyは1924年から1930年に掛けて中断してしまったので、ローズウェイがこのレースで活躍することはありませんでしたが、レースを目的に建造された帆走漁船の中で唯一現存している船です。

Roseway 3

上の写真はローズウェイの船側の拡大写真ですが、木造スクーナーの特徴である排水溝の形状、それにシュラウドの末端の船側の処理方法がよく判ります。帆船模型でも正確に再現したいところです。因み排水溝は内側が伝統的な赤色に塗られていました。1857年にEssexで建造されたフライング・フィッシュ(模型製作を計画中です)もほぼ同じ形状ですね。

Virginia 1

さて、バージニアは、ローズウェイが建造された時から80年後の2005年に進水した最新の木造2本マスト・ノックアバウトスクーナー(Knockabout Schooner、バウスプリットが無い船体)です。全長122 feet(37 m)、全幅23.8 feet (7.3 m)、160トンの大きさで、1916年~1939年にバージニア水先案内人協会(Virginia Pilots Association)が保有していたスクーナーVirginiaの復元船です。Tri Costal造船所で建造されました。高く聳える、フォア及びメインのトップマストが印象的で美しい姿です。

Virginia 2

バージニアは2007年に開催されたThe Great Chesapeake Bay Schooner Raceで、快速船のPride of Baltimoreを抑えて優勝するなど大いに活躍しておりましたが、財政難により最近、船長、乗組員を解雇して、母港であるバージニアのノーフォークからNauticusに移送され保管されているそうです。この船の公式WEB(Schooner Virginia)には『寄付のお願い』が大きく出されています。

Virginia 3

バージニアは昨年7月のハリファックスの帆船パレードでも輝いていた船なのですが、昨今の米国の経済低迷がこのようなところまで影響を及ぼしているのはとても残念なことだと思います。早く海に戻れるといいですね。

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ベル・エスポワールⅡとキャプテン・ミランダ(BEL ESPOIR II 1944 & Captain Miranda 1930)

BE (1)

ベル・エスポワールⅡは、1944年にデンマークのSvenborgで家畜輸送船(!)として建造されました。木造船で、長さ126ft(38.5m)、全幅24ft(7.3m)、189トンと小型ながら3本マストのトップスル・スクーナーの艤装です。1944年から1954年迄の10年間、Nette Sという名前で、デンマークのコペンパーゲンからドイツのハンブルクに家畜(牛)を輸送していました。この船は1955年に、フランスの青少年教育機関であるAssociation des Amis de Jeudi-Dimancheに引き取られ、その後は帆走練習船として大西洋、地中海を中心に活躍しています。

Captain Milanda

キャプテン・ミランダは、1930年にスペインで建造された鋼鉄製の貨物船です。長さ210ft(64m)、全幅26ft(8m)、839トンの3本マスト・ステイスル・スクーナー(STAYSAIL SCHOONER)で、現在はウルグアイ海軍所属の帆走練習船です。

キャプテン・ミランダはウルグアイの帆船らしく、ハリファクスの一般公開の時は、前部甲板に生バンドが入り、パーカッションを中心とした強烈なリズムのラテン音楽を演奏していました。音楽に合わせて、帽子を被り制服を着た海軍士官が、ラテンの雰囲気満点の淑女達と見事なステップを踏んでおり、見学者の人気を博していました。

Captain Miranda 2

下の写真はキャプテン・ミランダの後部甲板ですが、帆船というよりは機帆船のイメージです。中央の甲板の両端の煙突、中央の大きな操舵室と、ちょっと僕がイメージする帆船とは違います。

Captain Miranda 3

一方、ベル・エスポワールⅡは、コテコテの帆走輸送船で、スマートなボルチモア・クリッパーの対極にいます。この船尾の姿にもとても生活感が漂っています。『働く帆船』という雰囲気です。もちろん船上でダンスをしている紳士・淑女はいません。

BE (3)

18世紀の復元帆船(つまりバウンティー)が、ストックレス・アンカーを装着していると(そもそも時代考察に反するし)、ちょっと白けてしまうのですが、この無骨な帆走輸送船に錆びたストックレス・アンカーはとても似合っていました。

BE (2)

両船とも現在はラテン圏の国に所属する、元々貨物船として建造された3本マスト・スクーナーですが、共通点は3本マストのスクーナーというだけで、全く違う生い立ち、艤装、雰囲気です。僕はモッタリとしていながら往年の帆走貨物船の雰囲気満点のベル・エスポワールⅡの方により興味を惹かれますが。

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ジョリー・ブライズ(Jolie Brise 、1913)

Jolie Brise 1

Jolie Briseは1913年にフランスのパイロット(水先案内)船として、La HavreのAlbert Paumelle造船所で建造された木造のガフ・カッターです。パイロット船として数年使用された後、漁船に転用されましたが、この小型帆船が真価を発揮したのは、1925年に開催された第一回Fastnet Raceで優勝してからです。Jolie Briseは、1929年、30年のレースでも連続優勝を飾っています。因みにFastnet RaceはがRoyal Ocean Racing Clubが主催し現在も2年に一度開催されています。

Jolie Brise vs Bluenose

長さが56ft(17m)、幅が15.9ft(4.8m)、44トンのとても小さな帆船です。ハリファックス港ではブルーノーズの横に停泊していましたが、埠頭から見下ろすような感じで、本当にこのような小さな船が大西洋を横断してきたのかと驚くほどです。上の写真はブルーノーズとの比較です。大きさの違いが歴然としています。

Jolie Brise Deck

Jolie Briseは、英国のロンドンの西100マイルほどのところにある、1542年に設立された中高一貫教育の私立学校、Dauntsey's SchoolのSailing Clubが1977年から保有しています(Jolie Brise)。

海洋小説では頻繁にカッターが登場しますが、こんな感じだったのでしょうか。大砲を置くスペースも無いほど狭い甲板です。当然、舵輪ではなく舵柄です。操舵室もない剥き出しの中で大西洋の荒波に揉まれることを想像してしまいます。

ところでバウスプリットは船体の中心ではなく、下の写真の通り、前から見て左側にオフセットされ設置されています。これは帆船模型でもよくあるデザインですが、実物を見るのは初めてでしたので興味深かったです。

Jolie Brise Bow

Jolie Brineの帆船模型キットは、スペインのメーカーARTESANIA LATINA社から販売されていますが(Jolie Brise Kit)、キットを見るとモッタリしたした感じでかなりデフォルメされていると思います。実物はとてもシャープな感じの快速艇です。ハリファックスの帆船パレードの際は、黒色に塗られた小さい船体と、マルーン色のセイルがとても綺麗でした。セイルに風をはらみ船体を傾けつつ目の前を通過する姿は、船体の長さが5倍以上もある3本マストの帆船たちと比較しても十分な存在感を漂わせていました。

Jolie Brise 2

英国の私立中高校が(特に船員教育を志向しているのではない普通の共学の伝統校が)このような歴史的な帆船を保有して維持・管理するだけでなく、大西洋横断レースに参加してしまうとは凄いですね。

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