久しぶりの帆船模型(2012年6月)

F.Fish as of June 2012 (1)

1ヶ月以上も更新を怠ってしまいました。

ダウ船についての連載をしようと思ったのですが、なかなか筆が進みません。ということで、ダウ船の連載は不定期ベースにして、元来の(?)の趣味の対象を中心とした記事を続けていきたいと思います。

さて、冒頭の写真は一年以上も掛けて外板張りの作業をしてきたフライング・フィッシュ(Flying Fish)の船体の一部です。6月にようやく外板張りが完了しました。研磨も塗装もしていないので、クローズアップの写真は荒い船肌ですが。

以前の記事で説明した通り、フライング・フィッシュの実船の図面では、中部甲板の排水孔(Scupper)は、ブルワーク(bulwark)の支柱(stanchion)の間隔と同じ幅になっています。

ところで、外板はフライング・フィッシュのキットに入っていたアメリカン・ウォールナット(鬼胡桃)で張りましたが、甲板材としてキットに入っている素材(アガチス)が気に入りません。

Deck Planking Sandal Wood

甲板材は、導管が目立たない白系の木材にしたいと思っていました。1850年代のエセックス産の木造スクーナーの甲板材は、ハードメープル、ホワイトオーク等だったそうですが、模型工作には適しません。試行錯誤(?)の末に行き着いたのは、なんと白檀(サンダル・ウッド)を甲板材に使うアイデアでした。

手元にあった白檀の端材は、オーストリア産ですので、白檀の香りの素であるサンタロール(Santalol)の含有量が少ないのですが、それでも小型電動丸鋸で0.5mm程の厚さに挽いていくとき立ち上る芳しい香りはなんともいえません。上の写真は、白檀の端材を幅2.0mm、厚さ0.5mmに挽く過程を撮影したものです(下手な写真ですが、実物はもっと白色です)。

帆船模型の制作はなかなか進みませんが、製材はなかなか面白い作業です。下の写真は、最近フライング・フィッシュの船体艤装に使用する素材を手持ちの端材から製材した姿です。

F.Fish 製材 June 2012

左端からみて、支柱(stanchion)の造作につかう予定の、南米産のカステロ、薄い黄色の木材は、御蔵島産の黄楊、各サイズのカステロに混じっている、薄いオレンジ色の木材は、スイス産のペアーウッド(梨の木)、右端は御蔵島産の黄楊の端材です。

カステロは、俗にシャム黄楊と呼ばれるタイ産の本黄楊の代用品と同じくアカネ科の木材で、癖がない白系の色で見事に目が詰まっていて導管が目立たず、手に入りやすいので帆船模型に使用するのは適当な素材だと思います。

ところで、ペアーウッドも、導管が目立たず、とても素直な素材で加工が容易なので帆船模型作りに最適ですね。欧米の博物館に展示されている、歴史的な帆船模型の素材が、ペアーウッドとか黄楊なのが良く理解できます。

実物と同じ素材と思って、オーク材とかチーク材とかも仕入れてみたのですが、オーク材は木肌が荒く、薄板は割けやすくまったく駄目でした。チークは少しだけ船体艤装の味付けに使ってみたいと思いますが、「チークの甲板」は、色が濃すぎて駄目ですね。自宅の庭で使っているチークのテーブル、椅子とビーチベットは耐久性があり、とても気に入っているのですが。

帆船模型というか、木材の話題になってしまいました。

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Flying Fish 1857 (その7、船歴の検証)

A.D.Story Shipyard July 2008

手元にあるコーレル(Corel)のフライング・フィッシュの模型の解説書というか製作の手引を読んでいて、Howard I Chapelle著The American Fishing Schooners: 1825-1935の94~97頁の記載文との齟齬がとても気になります。

フライング・フィッシュについてコーレル社のキットの紹介文は次の通りです。

The FLYING FISH was designed by Jeremiah Burnham, the famous shipbuilder, and was launched at Essex, massachusetts, in 1860. For more than 20 years the FLYING FISH was the most representative ship of the MARKET SCHOONER class and was taken as a model by shipbuiders of the time.

【フライング・フィッシュは、有名な造船家であるジュレミア・バーナムにより設計され、マサチューセッツ州のエセックスで1860年に進水した。フライング・フィッシュは20年以上に亘り、マーケット・スクーナー・クラスの代表的な帆船であり、当時の造船界の模範であった】

Chapelleの著書では、フライング・フィッシュは1857年に建造されたことになっています。

以前の記事でも、コーレルの説明文に疑いの目を向けましたが、建造年は気になります。フライング・フィッシュに関する記録についてWEB上で探してみましたがなかなか見当たりません。

ところが最近、Mystic SeaportのWEBを見ていて、Reserch the Collectionsという項目があり、1857年から1900年迄のShip Register(船舶登録)が検索できることを発見しました。

早速、Flying Fish, Schoonerと入力すると、同じ名前のスクーナーが何隻が検索されます。1858年のNew York Marine Registerには、フライング・フィッシュの名前のスクーナーが5隻掲載されています。リストを見ていくと、1857年にEssexのA.Burnhamが建造したFlying Fishが見つかりました。登録港はGloucester、オーナーは、B.Lowe、船長はLoweとされています。因みに、調査日は1857年10月ですので、Flying Fishが建造されたのは、1857年の10月以前ということですね。船材はO(OAK-オーク)と登録されています。

Mystic Seaportはさすがですね。これでモヤモヤした気分が晴れました。コーレルのキットの説明はいい加減ですね。さて、Chapelleの著書の中では、フライング・フィッシュは、建造後Gloucesterを拠点にMackerel Fisherman(サバ漁)を数年間行った後、New London(コネチカット州、ニュー・ロンドン)に売られ、今度はアザラシ(Seal)とゾウアザラシ(Sea Elephant)漁(!)に従事したと記載されています。たしかに1876年の船舶登録データを見ると、この年から母港がNew Londonと記載されています。

アザラシ漁といえば、新艦長、孤高の海路 (海の覇者トマス・キッド〈7〉) (ハヤカワ文庫 NV ス 16-7)の中で触れられている箇所があったと思いますが、現在の過激な環境団体の活動を鑑みるとなんとも複雑な気持ちになります。

ところで、冒頭の写真は、マサチューセッツ州EssexのStory家の造船所があったところです。以前の記事で紹介したEssex Shipbuilding Museumの敷地で行われていた手作りカヌー教室(日本的な言い方?)です。こちらはとても牧歌的な風景でした。

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Flying Fish 1857 (その6、製作開始)

Flying Fish Flame 修正

前の記事の通り、20年以上前に当時伊東屋で購入したコーレル製のキットの製作をとうとう開始しました。20年以上も経っていますが、キールを含めキットの木材に曲がりもなくさすが名門コーレルのキットです。

Howard Chapelleの名著The American Fishing Schooners: 1825-1935に挿入されているフライング・フィッシュの図面をベースに、先ずは船首部分を修正し、同じくこのスクーナーの特徴として記載されている通りのキールの深さ(キール・ラベットから15から24インチ)を再現する為に、手持ちのウォールナット材を追加しました。

Flying Fish 1.22.2011

外板の下張りを開始したのが12月上旬。ちょうど年末年始の短い休暇を挟んだこともあり、1月末時点で外販下張りが完成しました。たしかLa Gloireの下張りには数ヶ月掛かったと記憶しておりますが、プランキング作業のスピードアップの要因は、今回は外板下張りの接着に、木工用ボンドではなく、瞬間接着剤を奢ったからだと思います。仕事の関係で週に多くても数時間の作業しか出来ませんが想像以上のスピードです。

下張りとはいえ、プランキングが進むにつれ、見事なクリッパー型スクーナーの船体であることが判ります。スターンポストが直角近い角度で立ち、更に真っ直ぐなキールもバランスが取れていて美しいです。

Flying Fish 1.28.2011

さて、これからが問題です。関連資料を読めば読むほど、更に僕が過去撮影した多くの木造スクーナーの写真を詳しく見れば見るほど、キットの矛盾点が目に付きます。何処まで拘るかは腕と気力と相談しながら考えて行きたいと思います。初心者向けキットとは云え、この船を1857年に建造した、マサチューセッツ州EssexのBurnham家の歴史的な造船所付近も(偶然)訪れていますので、ちょっと拘った模型を作ってみたいですね。

下の写真は。2008年夏にマサチューセッツ州の歴史的な漁港Gloucester(グロスター)で撮影した、Flying Fishの子孫の写真です。

Thamas E Lannon (2)

Thamas E Lannon (1)

Thomas E.Lannonは、Flying Fishが建造された1857年から140年後の1997年にBurnham家の28代目の当主である、Harold Burnham の造船所で進水しました。Flying Fishに比較すると小ぶりな船型ですが、Essex産の木造スクーナーの伝統を継承するとても綺麗な帆船ですね。

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Flying Fish(その5、コーレル社のキットの検証)

先日、次の本を手に入れました。表紙がMystic Seaportで保存されているL.A Duntonであることからも期待出来ます。700ページ近い分厚い本で、とても読み応えというか見応えがあります。サイズは小さいですが、137隻分の船体図面が挿入されています。

The American Fishing Schooners: 1825-1935The American Fishing Schooners: 1825-1935
(1995/10)
Howard Irving Chapelle

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その中に、半頁分の解説と共にFlying Fish(Schooner)の図面を発見しました。この小さな図面を入手できただけでも、この本を購入した意味がありました。

Flying Fishの説明箇所を読み、先ず疑問に思ったのは、この船のコーレル(Corel)社のキットの解説(http://www.corel-srl.it/pdf/flyingfish.pdf)。キットでは、1860年に建造されたと説明されていますが、上記の本では1857年建造と明記されています(図面にも明確に記載)。当時の船舶登録証を確認した訳ではありませんが、たぶん1857年に建造されたと考えるのが妥当と思います。更に、Corelのキットでは、「特徴のある特殊な構造と広いセイルエリアにより(Special construction characterists and the enormous amount of sail it carried)、20年間以上に亙り同クラスで尤も有名な船(For more than twenty years it was the most representative vessel of the Market Schooner class)」と解説されていますが、上記の本の中では、「Flying Fishは大変な快速船(She was a very fast sailer)」であり、1850年代のクリッパー型のスクーナーの好例(Fair Example)との記述であり、「20年間に亙り同クラスで尤も有名な船」というのはちょっと言い過ぎかなと思いました。(下はコーレル社のFlying Fish のカタログ写真)

Corel Flying Fish

帆船模型の関連サイトで、コーレル社の解説を丸写しにしたFlying Fishの紹介文を見る度に 、「たしかに綺麗な船体だけど、(イタリア製のキットなので、多分にイタリア的に)かなり大げさな解説だな」と思っていましたので、この本の解説を読んでちょっと納得しました。

この先は、帆船模型製作に関するとてもマニアックな話しになります。

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Flying Fishについて (その4、Gloucester)

Thomas E. Lannon

まだまだ続きます。

Essexを出発し、Cape Ann(ケープ・アン)を縫うように走り、午後遅くにGloucester(グロスターと読むらしい)に到着しました。

Gloucesterは、知り合いの(多分イタリア系)アメリカ人の外科医の出身地で、「New Englandに行くのであれば訪れてみて」と言われていたのですが、訪問前に「グロスターで高校生17名が妊娠協定」とのニュースが出て、ちょっと問題がある地域なのではと心配していました。

グロスターの歴史は、1623年に遡るアメリカで最初の漁港だそうですが、街に入ると活気が余りない気がしました。ただ、面白いのはイタリア語の看板が氾濫しており、イタリア料理店が軒を連ねているところ。イタリア系移民が多いのでしょう。グロスターでは、運転マナーも見事にイタリア的で、今回の旅行中初めて、合流でクラクションを鳴らされました。

折角だからと、早めの夕食をイタリア料理店で取ることにして、Seven Seas WharfにあるGloucester Houseに車を乗り入れました。実は、気になるマストが見えたので、駐車場に入ったら、イタリア料理店があった、というのが真実ですが、結構ちゃんとしたイタリア料理のレストランでした。但し、ウエイターは学生のアルバイトだし、味もいまいちでしたが。

よかったのは、丁度レストランの窓から、小ぶり乍らバランスの良いスクーナーが見えたところです。夕食中にこのスクーナーがSunset Sailに出掛けていきました。船の名前は、Thomas E. Lannon。綺麗な緑の塗装のクラシカルなクリッパー型のスクーナーで印象に残る船でした。

後で調べると、このThomas E.Lannonは、Harold A.Burnham(!)の歴史的な造船所で1997年に進水した船であることが判りました。H.A.Burnham このWEBを見ると、Harold Burnhamは1819年から続いている、Burhnham造船所の28代目の当主との記述。WEBの造船所の写真は、どこかで見たことがあるような風景だな。。と思って、後で写真を整理したら、何と、H.A.Burnham造船所は、Essex Building Museumの直ぐ隣にあったのでした。殆ど気にせずに写真だけ撮っていました。

Burnham

こういうことにいつも後で気が付くのですが、それにしても見事に繋がっています。

つまり、Flying Fishの直系の子孫が、Thomas E.Lannonということですね。

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