Yacht America (ヨット・アメリカ 1851) その9 (航海燈と霧笛)

Amarica Port Light View

フライング・フィッシュの帆船模型の作業は過去1年以上殆ど進んでいませんが、久しぶりに図面とキットのパーツを眺めていて、航海燈の取り付け方が気になりました。CORELのキットでは特に説明もなく、図面を見るとシュラウドに取り付けてあるみたいですが、本物はどうやって固定するのでしょうか。

ヨット・アメリカのレプリカ帆船の写真を整理してみると、やはり無意識に航海燈の写真を撮影していました。冒頭の写真はポート側の航海燈ですので赤色です。表から見るとシュラウドに取り付けられているのわかりますが、取り付け方が判明しません。

Amarica Port light and horn

上の写真は、ポート側の舷燈の裏側から撮影したものです。なるほど、木製の箱がロープでシュラウドに括り付けてありました。これは19世紀の当時と略同じ取り付け方法ではないでしょうか。

Port Light and Ship Horn

左舷の航海燈ケースの下には、3連ホーンが付けられています。勿論これは、コンプレッサーで駆動するエア・ホーンなので現代的な艤装です。下の写真はスターボート側の航海燈で霧笛は付いていません。良く観察すると航海燈のケースが水面に平行になるような取り付け方となっていることが良くわかります。

Sailing America

航海燈のケースも真鍮製で雰囲気があります。但し、ヨット・アメリカが建造された1851年当時にこの船舷の航海燈が付けられていたかは微妙です。

現在では、船のみならず飛行機の世界でも常識となっている、左舷が赤燈、右舷が緑燈の国際規則は、英国で1863年に制定された海上衝突予防規則を基に、1864年に英国、フランス、ドイツ、アメリカ等、約30カ国が批准しています。アメリカでは、1864年9月のニューヨークタイムズの記事の通り、1864年4月29日の当時のリンカーン大統領が同規則に署名し、1864年9月1日から法令として施行されました。

America meets Carifolnian

この法令にでは霧笛の使用についても、霧の中で航海中の帆船は霧笛(停泊中の汽船、帆船は船鐘)を使用することについて規定されています。

上の写真はヨット・アメリカが約4時間の充実した航海を終えてサンディエゴに戻る途中にすれ違った、美しいスクーナー・カリフォルニアンに、ヨット・アメリカが3連ホーンの霧笛を鳴らしている光景です。

America Return to the port

サンディエゴ湾が黄金色に染まるころ、ヨット・アメリカはセイルを畳み帰港しました。

これでヨット・アメリカの連載を終えます。今度機会があったら、このスクーナーが帆走する姿を見たいです。

今年は、Tall Ship Americaの舞台が西海岸なので、美しい帆船達に出会えるチャンスなのですが、残念乍らスケジュールが合わないので、帆船紀行は今年もお預けになりそうです。

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Yacht America (ヨット・アメリカ 1851) その8

America Stern View 1

アメリカのヨットの大御所(The grand old man of American Yaching)の異名を持つWilliam Picard Stephens(1864〜1946)が残した莫大なヨットに関する資料は、ミスティック・シーポートに保管されているそうですが、1921年に書かれたWP Stephensのレター(Letter from W.P Stephens)によると、ヨット・アメリカのオリジナル帆船の船形は定かではないそうです。

America Name Plate

レプリカ帆船に取り付けられた、少し大きすぎる感じのスターンの鷲の彫刻と誇らしく彫られた「AMERICA, NEW YORK」のデザインは本来はどうだったのでしょうか?

この彫刻を除くと、スターンは低い形状で、船尾の吃水が深く、当時のフィッシング・スクーナーに比較すると遥かにモダンなデザインです。

Howard I Chapelleの図面を引用してみます。上が1851年に建造されたAMERICAで、下が1857年にEssexのA.Burnhamが建造したFLYING FISHの図面です。

America Drawings by H Chapelle

Flyring Fish Drawing by H Chapelle

フライング・フィッシュは、当時の快速艇だったそうですが、やはり漁船で実用性重視なのでしょうか。ヨット・アメリカは、JamesとGeorgeのSteers兄弟が設計し、ニューヨークのEast Riverにあった H. Brown造船所が建造しました。そもそもヨット・アメリカはJohn Cox Stevensが率いる、ニューヨーク・ヨットクラブが英国にアメリカの造船技術を見せつけることと英国艇を打破することを目的に発注したスクーナーですので、他の帆船と成り立ちが異なります。

1851年建造のヨット・アメリカは、船体長が101ft3in(約30.86m)、幅が22ft10in(約6.96m)です。因みに6年後の1857年に建造されたフライング・フィシュの登録は、船体長が75ft(22.86m)、幅が22ft6in(6.88m)ですので、ヨット・アメリカの方がスマートな船体ですね。ヨット・アメリカの船尾の図面も引用してみます。

America Drawing by H Chapelle 2

当時の一般的なフィッシング・スクーナーは、前部甲板と段差がある後部甲板があるのですが、アメリカはフラット・デッキです。

前部甲板に陣取りシュラウドを掴んで、静かな水面を帆走するヨット・アメリカの舳先を見ていると、なにか19世紀にタイムスリップした感じがしてきました。

America Bow - Hatch

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Yacht America (ヨット・アメリカ 1851) その7

America Main Mast Boom

ヨット・アメリカのメインマストのブームの写真です。

オリジナル帆船では、ブームはもっと長かった筈ですし、現代的な索具も付いていなかったと思いますが、綺麗な木製ブームとニスを塗られた木製ブロック(滑車)が良い雰囲気を醸し出しています。帆走中の写真はいいですね。

America Fore Mast Top

フォアマストのトップも興味深いです。マストは鋼鉄製ですし、ガフのジョーも金属製で、現役帆船らしい機能的な索具が取り付けられています。

History Of American Sailing Sh Howard Chapelleの名著に挿入されているヨット・アメリカの図面ではヨット・アメリカのフォア・マストには元来トップマストは装着されていません。現存する写真はごく普通のスクーナー艤装をしているので、本当はどうだったのでしょうか。下の写真は、1860年代にAnnapolisで撮影されたヨット・アメリカだそうです。ボルティモア・クリッパーを彷彿させるようなマストの傾斜で美しい姿です。

America in 1860s in USA

さて、ヨット・アメリカは船首(Bow)の形状が特徴的です。レプリカ帆船ではCutwater(水切り)の角度が緩やかですが、オリジナル帆船はシャープな造形だったのでしょう。トレイルボードというか、船首飾りは下の写真のように再現されています。

America Bow

Chapelleの図面(引き直したものでWEBから借用)では、船首は次のような感じです。図面上では、先端に小さなBillet Headがつけられていますので、ここはレプリカ帆船と異なるところですね。

America Bow Drawing

マニアックな話題になっていますが、もう少し続けます。

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Yacht America (ヨット・アメリカ 1851) その6(船上艤装)

America Deck Layout from the stern

さて、クジラを見た後はのんびりと帰路につきます。

上の写真は、ヨット・アメリカが停泊しているところを後方から見下ろすように撮影したもので、デッキ・レイアウトが良く判ります。停泊している時は、ハッチとか舵輪とかの構造物にカバーが掛けられていて大事にされている様子で嬉しくなります。

救命用具は機能的ながら巧妙に配置されており目立つことがなく、本来のスクーナーの整然としたデッキが再現されています。デッキはチーク張りですね。ハッチとかは、マホガニーでしょう。ニューヨーク州のSCARANO造船所が1995年にこの復元帆船を建造した時の総費用は6百万ドル(約6億円)を超えていたそうですので、素材を吟味した豪華なヨットです。

America Fore Hatch

さて、船上の艤装を詳しく見てきます。フォアマストの後ろに小さな船鐘があります。磨かれていませんが、いい雰囲気です。マストをよく見ると鋼鉄製でしたが、ブームは見事な色の木製です。

America Ship Belle

シャープな船首部分も美しいです。シュラウドの根元のランヤードの両端は、デッドアイ(3つ目滑車)で時代考察も完璧です。シュラウドも丁寧にサービングがされています。

America Fore Deck View

下の写真は、フォアマストの根元と、中部甲板の光景です。流石に、各種ウインチとロープ固定用のクリートが付けられています。流石に1851年のオリジナル船の装備であった伝統的なビット、ファイフレール、ビレーピンのセットではありません。

Fore Mast WInches

次の記事では更に詳しく見ていきます。本当に美しいスクーナーで興味が尽きません。

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Yacht America (ヨット・アメリカ 1851) その5 (Blue Whale)

Blue Whale 2

ヨット・アメリカがクジラに近づきます。機走をしていないので、索具がギーギーとなる音に混じり、クジラの息継ぎが聞こえてきます。

以前メイン州で見たミンククジラとは異なり巨大なクジラです。

Blue Whale 5

「Blue Whaleだ」とヨットアメリカの船員が教えてくれます。クジラの廻りの海水が光の屈折により綺麗なブルーに染まっています。Blue Whaleの名前に納得です。

小さな背ビレと下の写真に写っている畝が、Blue Whale、つまりシロナガスクジラの特徴だそうです。

Blue Whale 4

ヨット・アメリカの近くに時折悠々と浮き上がります。生臭い空気を感じるほどの距離です。これが帆船によるホエールウオッチングの醍醐味ですね。大型のツアー船ではこんなに近くで見た事はありません。

Blue Whale 1

今回は、残念ながら潜航する特に尾びれを綺麗に見せてくれませんでしたが、横倒しになって畝をみせてくれた直後に尾びれが半分だけ見えました。

Blue Whale 6

シロナガスクジラは、余りにも巨大なので、帆走捕鯨船時代は捕獲の対象ではありませんでしたので、天敵がいなかったそうですが、近代捕鯨の対象になった為に個体数が激減したそうです。下の写真は、2008年夏にMystic Seaportで撮影した、捕鯨ボートを現存する唯一の帆走捕鯨船Charles W Morganから降ろす実演の場面ですが、船首にある手銛ではBlue Whaleを仕留めることは想像し難いです。船上にある捕鯨用の銛の写真も掲載してみます。シロナガスクジラの全長は25m程になるそうですが、
チャールズ W モーガンの長さは僅か113 ft (34 m)です。

CW Morgan Whale Board

CW Morgan 捕鯨銛

因みに1841年に建造されたCharles W Morganは、2008年から2013年に掛けて大規模修復が行われて航海が出来る状態に戻っているそうです。この帆船は1921年5月に37回目の航海からベッドフォードに帰港して以来の約100年ぶりに38回目の航海を2014年年5月から8月に掛けて行うそうです。アメリカに住んでいれば駆けつけるところですが。

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