HMSサプライズ(HMS Surprise,ex-HMS Rose) 1970 その11

HMS Surprise Main Must Fighting Top

HMSサプライズのメインマストのトップ(檣楼)を見上げた写真です。帆船模型にご興味のある方は拡大してじっくりと見てください。この写真は敢えて、3018 x 2253のオリジナルのサイズで掲載しています。クロストゥリー、プラットフォームの構造が良く分かります。

18〜19世紀初頭の本物のHMSサプライズでは、ヤードはマストに金具で固定されておらず、金属チェーンのスリングの代わりにジアー(滑車装置)で吊ってあった筈です。

フトック・シュラウド(シュラウドからトップに張ってあるロープ)、トップと連結するフット・プレートを見ていくと興味が尽きません。

HMS Surprise Fore Mast

上の写真はフォア・マストを撮影したものです。ブレースに取り付けられたFiddle-Block(バイオリン型滑車)に目がいきます。保存帆船と異なり、このレプリカ帆船は帆走できる状態ですので、セイルが装着されていますし、スタンディング・リギングだけではなく、ランニング・リギング(動索)も張ってありますので、本当に見所が多い帆船です。

HMS Surprise Mizen Must

次はミズンマストのガフの取り付け部分を見てみます。マストとガフの接続部のジョー(Jaws)とパレル(parrels、紐で繋がっている木製のボール)も判ります。よく見るとこの復元帆船のマストは鋼鉄製ですね。ヤード、ガフ、ブームは木製ですが。

HMSサプライズ連載の最後は次の写真にします。

フォアマストをどんどん登っていき、トップを超えてトップマストのクロストゥリー(檣頭横材)に腰掛けて少し休んだ後に立ち上がると、トップマストのキャップ(檣頭)に刻まれたジャック・オーブリーの青春の形見が目に入る筈です。

HMS Surprise Fore Top Mast

スパニッシュ・メインの入り江で切り出した堅固なグリーンハート(Greed Heart、クスノキ科の中南米原産の木材)に彫刻されたマーメイドとJAの文字を見るには、勇気を出して聳えるフォア・トップマストまで登らなければなりません。

これで、HMS Surpriseの連載を終わりにします。

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HMSサプライズ(HMS Surprise,ex-HMS Rose) 1970 その10

HMS Surprise Captains cabin

HMSサプライズの艦長室(Grate Cabin)は、艦尾窓から日差しが一杯に入り、USSコンスティティーションより快適そうです。天井の高さが史実と若干異なるとは思いますが、調度品を含め綺麗に再現されていると思います。

HMS Surpise Qter Gallary (2)

下艦してクオーター・ギャラリーをもう一度見てみます。船体との接続部分が帆船模型作製の参考になると思います。窓の形状も単なる長方形ではなく、ガラス毎に異なる台形になっています。

このレプリカ帆船はやはり外から眺めるのがいいですね。艦名を記したボードも美しい造形です。

HMS Surprise Name Board

忘れてはいけないのは、艦尾灯です。映画マスター・アンド・コマンダーの中の囮筏のエピソードで、艦尾灯を消すと同時に筏に装着されたランタンを灯すシーンを思い出します。当時の帆走軍艦の典型的なランタンの形状です。

HMS Surprise 艦尾等(2)

最後の記事にしようと思いましたが、マストの写真が抜けていたので次の記事に続けます。


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HMSサプライズ(HMS Surprise,ex-HMS Rose) 1970 その9

HMS Surprise Gun Deck View 1

HMSサプライズの艦内に入ります。

上記の写真はガンデッキの光景ですが、なんか変ですよね。そうです、ガンデッキの天井の高さを確保する為に、9ポンド・キャノン砲の砲列が嵩上げしてあるのです。下の写真を見ると、床の位置と砲門高さが異常に離れているのが分かります。

HMS Surprise Gun Deck Level

マスター・アンド・コマンダーの映画の中では、低いガンデッキの天井がしっかり再現されていますし、ガンデッキの砲列には、ギャング・ウェイからの光も差し込んでいますので、映画の場面はこのHMSサプライズ(旧HMS Rose)の復元艦内で撮影されたものではないのでしょう。

可能な限り忠実に作製(改造)されたと自分で説明をしておきながらあら探しをしてもとは思うのですが、映画でこの実船が使われたのは、海上での実写の時なのだと思います。実際にこの美しいフリゲート艦の外装は見事に再現されていますし。

HMS Surprise Galley

上の写真はギャレー(galley)です。HMSサプライズの艦内で唯一、火気が許されたところです。まあ、スティーブンはどこでも葉巻に火を付けていたみたいですが。余談ですが、オーブリー・シリーズの6巻The Fortune of Warには(
ボストン沖、決死の脱出行 (上) (ハヤカワ文庫 NV)というとんでもない名前の邦題がついていますが)に出てくるヨーク艦長のHMSラ・フレシェは、軍医マクリーンの煙草の火の不始末で火災を起こし爆沈してしまいますね。

HMS Surprise Stuck

ギャレーの煙は、上の写真の前部甲板のスタック(煙突)に接続されています。
The Frigate Surprise: The Complete Story of the Ship Made Famous in the Novels of Patrick O'brianに挿入されているKarl Heinz Marquardtが描いた図面を見るとスタックの向き(開口部が後ろを向いている)とかの相違はありますが。

これも余談ですが、手元にKarl Heinz Marquardt氏の著書、
The 44-Gun Frigate USS Constitution, "Old Ironsides" (Anatomy of the Ship)
The Global Schooner: Origins, Development, Design and Construction, 1695-1845がありますが、どちらも素晴らしい本です。帆船模型をつくる目的ではなくても、オーブリー・シリーズを読み込む際に、USSコンスティテューションの図面は必見ですね。実は、この1797年に建造された米国海軍最古の現役艦の模型キットは、2008年夏にニューベリーポートの小さな帆船模型店で購入しているのですが、いつ作製するのやら。

話がHMSサプライズからずれてしまいました。次はHMSサプライズ連載の最終回にします。

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HMSサプライズ(HMS Surprise,ex-HMS Rose) 1970 その8

HMS Surprise fore mast rigging

この写真は、艦首からフォア・マストを見上げた構図です。

フォア・ステイ(Fore Stay)を辿っていくと、クロウズ・フィート(Crow's feet)がステイを支えているのが分かります。カラスの足とは巧く表現したものです。帆船模型でも再現されるのでお馴染みですが、とても細いロープですね。無論、フォア・ステイはお約束通りにS字撚りのロープが使われています。フォア・ステイの下のロープは、フォア・プリベンター・ステイ(Fore Preventer Stay)で、フォア・ステイスル(Fore Staysail)を張る時に動く輪、ハンクス(Hanks)が手前に見えます。

しかしフォア・ステイは見事な弧の字を描いています。この弛みを模型で再現するのは余程大型の模型でないと無理でしょう。ところで、セイルを見ると、フォア・コース(Fore Course)は取り外されていますね。下の写真はWEBから引用したHMSサプライズのフル・セイルの写真です。いつか帆走する姿を見てみたいです。

HMS Surprise FUll Sail

さて次は、キャッドヘッドです。アンカーの取り付け方が参考になります。但し、アンカーは現代的な構造で、ストックは木製ではありません。まあ、野暮なストックレスアンカーより雰囲気はありますが。

HMS Surprise Cat Head and Anchor

キャットヘッドを艦上から見た姿が次です。クリートとヘッド・ティンパーの位置、アンカー・ストッパーの取り回しが参考になります。このあたりは本当に18世紀のフリゲート艦の構造が見事に再現されています。

HMS Surprise Cat Head from the Forecast

フォアキャッスルを観察していて面白いものが目に入りました。アンカーに取り付けるブイですね。素材はともかく形状はこれも18〜19世紀の帆走フリゲートのブイと同じだと思います。

HMS Surprise Bouy

詳細を見ていくと、止まらなくなってしまいます。次はようやく艦内に入ります。

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HMSサプライズ(HMS Surprise,ex-HMS Rose) 1970 その7

HMS Surprise on the deck

HMSサプライズの話にもどります。

感慨に浸りながら艦上に上がり、廻りを見渡してみると、本来艦舷に鎮座している筈のキャノン砲、カロネード砲が撤去されており、フリゲート艦というより輸送船の甲板みたいです。まあ、現役帆船らしく動索が綺麗にビレイピンに巻かれているので気を取り直して見ていきます。

神聖な(?)クォーターデッキもガランとした感じです。艦尾にあるのは、信号旗を入れる箱ですね。但し、スターン・チェーサー(艦尾砲)を使うときには取り外すのでしょう。Stern Chaserの砲門の拡大写真も添付してみます。

HMS Surprise Qter Deck

HMS Surprise Stern Chaser砲門

それにしても、甲板材のコンディションが悪く、水兵が裸足で作業をしたら怪我をしそうです。米国最古の現役艦USSコンスティテューションの張り替えたばかりの甲板材と比較したら酷かもしれませんが、そろそろ張り替えの時期だと思います。

HMSサプライズの甲板を歩いていて感じた違和感は、外された大砲だけではないことに気が付きました。この復元帆船の中部甲板は、本来のHMSサプライズ 、典型的な18世紀〜19世紀初頭の木造フリゲート艦のような、ギャングウェイ(Gangway)がないのです。下の図面の青で示した部分がGangwayで、グレーの部分は開放部で通常スキッド・ビーム(Skid Beam)の上に艦載ボートが載せられています。

Surprise Deck Plan

この復元船の原型であるHMS ROSEの時代は、もっと教育帆船らしい構造物が甲板にあったみたいですので、あまり目くじらを立ててもしようが無いのですが、このあたりが復元帆船の限界なのでしょうか。勿論、クォーターデッキとフォアキャッスルを行き来するのが、ギャングウェイだけでしたら、観光用として不具合があるとは思いますが。

HMS Surprise forecast

フォアキャッスルを見ると、フォアマスト前後のビット(Bitts)、ビレイピンにしっかり巻かれた動索となかなか雰囲気があります。フォアキャッスルと、甲板から見下ろした艦首部分を次の記事で詳しく見ていきます。

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