ディスカバリーⅣ(Discovery 2007, バージニア州 ジェームズタウン、  その8) 

Discovery (1)全景後部

ディスカバリー(Discovery)の名前は、多くの帆船に命名されていますが、この帆船はその中でも尤も小型の船ではないでしょうか。英国東インド会社に所属する1602年以前に建造された20トン程のFlyboatとの記録が残っています。ジェームズタウンに停泊している復元船は、帆船というより帆走ボートといった感じです。

Discovery (2)前部

ディスカバリーは、スーザン・コンスタント、ゴッドスピードと共に1607年にジェームズタウンに到達した後、入植地に唯一残された船です。その後、この小さな帆船は、ヘンリー・ハドソン(Henry Hudson)の1610~11年の北西航路探検に使われたとされています。帆船模型の世界では、ヘンリー・ハドソンの乗艦してHalf Moonが有名ですが、この船の本来の名前はHalve Maenであり、オランダ東インド会社に所属する帆船でした。ハーフムーンの復元帆船はニューヨーク州のAlbanyにあります。因みに、ヘンリー・ハドソンは、ディスカバリーによる、4回目の北西航路開拓の探検航海で、アイスランド、グリーンランドを経て、1610年8月にハドソン湾に到達しました。1610年の冬から11年の春に掛けてハドソン湾が氷に閉ざされた為に越冬。ヘンリー・ハドソンは氷が解けた後に太平洋に抜ける航路の探検を進めようとしたのですが、乗組員の反乱にあい、息子と腹心に部下と共に天蓋ボートに置き去りにされてしまいました。ハドソンの最期は誰にも判りません。ディスカバリーは反乱した乗組員と共に英国に帰港しましたが、その後の船歴は途絶えています。

Discovery (3) 全景前部

さて、現在ジェームズ・タウンに係留されているディスカバリーもゴッドスピードと同じく4代目です。この帆船は、なんと2008年の夏に訪れたメイン州のBoothbay HarborBoothbay Harbor Shipyardで建造されました。建造時の写真を次のサイトで見ることが出来ます。ディスカバリーⅣの大きさは、全長66ft(約20.1m)、デッキ長50.1ft(約15.3m)、全幅14ft(約4.26m)、高さ59ft(約18m)、重さは20トンです。

この艤装をどう表現すれば良いのでしょうか?ケッチ型の変形といえないことはないと思いますが正確には判りません。手元にあるスウェーデンの提督であり造船技師であったチャップマン(Fredrik Henrik Af Chapman、1721~1808年)の著書の中の図面LXIIのNo.7で分類されているDogger(漁船)が一番近いような気がしますが、ちょっとチャップマンの時代と違いますね。因みにDoggerの名前は、英国の東の沖合いのドッガーバンク(Dogger Bank)漁場からと思われます。 ジェームズタウンを訪れた日(2010年8月)、ディスカバリーは、横帆展開の実演をしていました。中々雰囲気があります。

Discovery (4) Swivel Gun

武装はゴッドスピードと同じく回転砲(Swivel Gun)だけですが、ゴッドスピードより更に時代を感じる形状です。最後の船首部分の写真を掲載します。ウィンドラス(揚錨機)は更に簡素化されています。ストック・アンカーの置き方が面白いですね。

Discovery (6)ウインドラス

これでジェームズタウンの記事は終わりにします。2010年夏の米国旅行記も残り僅かになって来ました。NYC⇒ニュージャージ州⇒メリーランド州⇒バージニア州と車で移動し、ニューポートニューズ(Newport News) で1週間に亙る子供達のスポーツ競技会の後、ジェームズタウンに立ち寄り、最終目的地のワシントンDCに向いました。

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ゴッドスピードⅣ(Godspeed 2006、バージニア州 ジェームズタウン、  その7)

Godspeed Card

ゴッドスピードの4代目は、全長88ft(約26.8m)、全幅17ft(約5.2m)、マストの高さは71.6ft(約21.8m)で40トンのサイズです。スーザン・コンスタントに比べるとかなり小さい船体です。冒頭の写真は、2010年8月にジェームズタウン博物館の売店で購入した絵葉書です。本当に帆走する姿を見てみたいものです。

さてゴッドスピードの細部を撮影した写真を何点か掲載します。下の写真は、船体前部からバウスプリットの眺めです。フォアキャッスルはありません。バウスプリットの取り付け方が面白いですね。スターボート(右舷)側にオフセットされています。ウインドラス(揚錨機)もこの時代の特徴を良く再現していますね。

Godpeed(4)ウインドラス
 
次は、船尾からの前方を眺めです。本当に小さい帆船です。現代のスクーナー船と比較しても更に小型です。手前に写っている棒は舵柄です。無論、ホイップスタッフを装着する大きさの船ではありません。

Godpeed(5)後部甲板からの眺め

続けてこの帆船の最後部の舵柄の詳細写真です。こんな露天甲板で舵を取りながら大西洋を渡ってきたと思うと、俄かに信じられない感じがします。もっと言えば、1606~7年の航海で39名の乗客と13名の乗員、つまり合計で53名もがこの小さい帆船の船上で144日も過ごしたのでした。

Godpeed(6)操舵

ゴッドスピードの武装は回転砲だけです。17世紀初頭の回転砲は青銅製なのでしょうか。

Godpeed(7)回転砲

ジェームズタウンの船着場には、先に紹介したスーザン・コンスタント、ゴッドスピード、ディスカバリーの3隻の帆船が停泊しているのですが、ちょっと離れたところにもう一艘の帆船が停泊しています。残念乍らこの帆船は公開させておらず、埠頭は立ち入り禁止で近くによれないのですが、ゴッドスピードの船上で説明をしていた博物館の係員から、この船はゴッドスピードⅢだと教えて貰いました。

Godspeed Ⅲ

ゴッドスピードⅢは、1982年に建造が開始され1984年にヴァージニア州のニューポート・ニューズ造船所(Newport News Shipbuilding)で艤装され完成しました。全長68ft、全幅14.8ftと4代目より一回り小型です。この帆船は1985年にロンドンからジェームズタウンまで帆走したそうです。4代に亘るゴッドスピードの歴史は、The Four Lives of the GODSPEEDで詳しく説明されています。一部のヤードは取り外されていますが、セイルが巻かれたままで、帆走できそうな感じです。

さて、次の記事では、ディスカバリーの復元帆船を紹介します。

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ゴッドスピードⅣ(Godspeed Ⅳ 2006、バージニア州 ジェームズタウン その6)

Godspeed全景

オリジナルのゴッドスピ-ド(Godspeed)は、スーザン コンスタント、更に小型のディスカバリーと共に1606年12月20日ロンドンのテームズ川のブラックウォール埠頭(Blackwall berths)を出航しバージニアを目指しました。

ゴッドスピードの建造年は不明ですが、3本マストの小型ガレオン船で大きさは全長68ft(約21m)、全幅が15ft(約4.6m)、40~60トン程度の小さな帆船です。船長は、バーソロミュー・ゴスノールド(Captain Bartholomew Gosnold)でした、ゴスノールド船長は、1602年にコンコルド号(Concord)による探検航海で、5月25日に現在のケープコッドに達しており、この岬をケープコッド(タラ岬)と名付けけています。メイフラワー号が1620年にケープコッドに到着する18年も前の話です。

ゴスノールド船長は、ケンブリッジ大学を卒業し、ミドル・テンプル法曹院で法学を学んでおり、探検家であると共に法律家でした。ウォルター・ローリー(Walter Raleigh)とも親交があったそうです。

Godspeed (2) 船首

さて、帆船の話に戻ります。ゴッドスピードは、上記した通りの小さな帆船で、記録によるとジェームズタウンへの植民の後、1607年にスーザン・コンスタントと共に英国に戻りますが、1610年にもバージニアに航海した記録が残されております。ゴスノールド船長は1607年8月にジェームズタウンで亡くなっていますので、1610年の航海は別の船長の下で行われたのでしょうが、ゴッドスピードの末路も含め、これ以降の記録は残っていないそうです。

現在ジェームスタンで展示されているゴッドスピードは、4代目にあたります。冒頭の復元船の写真はスーザン・コンスタントのクォーター・ギャラリーからゴッドスピードを撮影したものです。ゴッドスピードにはセイルも取り付けられていて、直ぐに出航出来そうな雰囲気です。この帆船は、2006年にメイン州のロックポートで進水した新造船です。オリジナル船に比較して一回り大きい船体で、カリフォルニア州のリッチモンドにあるTRI-COASTAL MARINEが設計を担当しました。ご参考迄に、TRI-COASTAL MARINEは、メリーランド州の親善帆船プライド・オブ・バルチモアⅡとか、コネチカット州の親善帆船であるアミスタッドの設計も行なっています。

Godpeed(3)船尾側面

次の記事では、ゴッドスピードの各部を詳しく見ていきたいと思います。

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スーザン・コンスタント復元船(Susan Constant 1991、バージニア州   ジェームズタウン、その5)

Susan Constant (14) リギング

さて次はリギングです。丸い形のトップ(檣楼)がこの時代の帆船らしい雰囲気を醸しだしています。ヤードにフットロープ(Footrope)が取り付けられていますが、17世紀の初頭は、フットロープは存在しなかったと思いますので、これは復元船スーザン・コンスタントが帆走することを考えた安全策でしょう。

Susan Constant (4) ホイップスタッフ

上の写真の左側の長い棒は、お約束のホイップスタッフ(操舵棒、Whipstaff))です。右側にコンパス、砂時計、ログ(速度測定器)と航海に必要なアイテムが展示されています。

ホイップスタッフは、次のようにラダー(舵)に連結されています。単純な構造で、判りやすいと思います

Susan Constant (8) 操舵設備

さらにマニアックな写真を続けます。フォアキャッスル(船首楼)のビットとファイフレールです。ビットの上部は彫刻が施されており凝っています。

Susan Constant (15) ビット

最近の僕の帆船の興味の中心は、18世紀後半以降の艦船ですので、16世紀末~17世紀の帆船にはさほど興味を覚えていませんでした。ところが、マサチューセッツ州プリマスに停泊しているメイフラワー号、そしてジェームズタウンに停泊している3隻の17世紀初頭の帆船の復元船を見て、この時代の帆船にもとても魅力があることを再発見しました。30年ほど前にストックホルムのヴァーサ(Vasa)博物館の売店で購入したビリングボート社製のゴールデン・ハインド(Golden Hind)のキットが未製作のまま東京の実家の何処かに眠っています。このキットはかなり前に廃盤になっていると思いますが、全長が1m程の大きい縮尺のキットです。製作もしていないのに、ボロボロになった図面だけは何故か手元にありますが、いつか作ってみたいと思います。

Golden Hind図面

次の記事からは、スーザン・コンスタント以外の2隻の帆船、ゴッドスピード(Godspeed)とディスカバリー(Discovery)について各々詳しく見ていきたいと思います。

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スーザン・コンスタント復元船(Susan Constant 1991、バージニア州  ジェームズタウン、その4)

Susan Constant (9) スターン側面

スーザン・コンスタントの復元にあたり、Allen C.Rawl Incが採用したのは、南米のガイアナ、スリナム等から産出されるパープルハート(Purpleheart)、グリーンハート(Greenheart)とかの耐久性に優れた木材です。グリーンハートは、埠頭の杭打ちとかの海中工事に昔から使われている素材だそうです。

この帆船のキール(竜骨)にはグリーンハートが使われています。グリーンハートは、くすのき科の木材ですが、耐衝撃性はオーク材の2倍程で、極めて重硬で腐りにくい材質と説明されています。木造帆船にうってつけの素材ですね。

ところでスーザン・コンスタントは展示物ではなく帆走が出来ます。2010年8月時点では、セイルは取り外してありましたが、保存帆船と違い、リギングもしっかり整備されています。公式パンフレットで帆走する3隻の帆船の写真を見ることができます。

Susan Constant (10) スターンからの前部

冒頭の写真はスターンを横から撮影したものです。17世紀初頭のガリオン船の色彩豊かなペイントが面白いです。スターン・ギャラリーの言葉の由来となった、船尾回廊の構造もじっくり観察できました。ギャラリーのラインは船体に一致していません。又、船体のレールもこの時代には彫り込みがされていないのでしょうか?シンプルな厚板です。上の写真は船尾甲板から前方を撮影したものです。うーん、甲板材は見事にマージンプランクにニビングされていますが、当時はどうだったのかと考えてしまいます。船上で、この時代の帆船の特徴的なナイトヘッドとキャプスタンも撮影しました。ナイトヘッドは前と後ろからの姿です。

Susan Constant (12) ナイトヘッド-2      Susan Constant (11) ナイトヘッド      Susan Constant (11) キャプスタン

船内に入ると、4門のミニオン砲(Minion)が目に入ります。18世紀~19世紀の帆走軍艦の搭載砲と比較すると玩具みたいに華奢な感じです。メイフラワーに搭載されているのと同じタイプです。

Susan Constant (3)船内

幾つか撮影をしたので写真を掲載します。射角を調整する木片が、砲尾の下に装着されていないので砲身が不自然な角度になっています。

Susan Constant (13) ミニオン砲

又、写真が増えて来てしまいました。スーザン・コンスタントの詳細写真は次の次の記事に続きます。

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